空き家率が高い地域に見られる傾向と空き家活用の可能性

山梨県の街並み
日本全国で約820万戸(平成25年)まで増えた空き家は、国が法整備を行い、自治体が強制力を伴った対策を講じる段階まで来ています。
維持費を承知の上で、空き家を所有している人にとっても、この流れは見逃せません。

また、空き家が不動産市場に出回れば、供給が増えて相場は下がりますし、不動産市場に出回らないと、資産価値の損失や地域経済が停滞する一要素になります。
いずれにしても、空き家の増加が好循環を生み出す想定は難しいでしょう。

ここで考えたいのは、空き家率が高い地域に、何か傾向があるかどうかです。
つまり、所有する空き家のある地域で、近い将来に空き家率が高まると予測できれば、先手を打った空き家活用も検討できるわけです。

ただ、空き家が増える原因は1つではなく、明確な結論は出ないかもしれません。
それでも、空き家活用を見直すきっかけになるのではないでしょうか。

今回取り上げる地域と選んだ理由

平成25年住宅・土地統計調査によると、全国で最も空き家率が高い都道府県は、山梨県の22.0%でした(2位は長野県の19.8%、3位は和歌山県の18.1%)。
しかし、山梨県や長野県は避暑地として有名なので、そのまま鵜呑みはできません。

空き家率の統計には、別荘などの二次的住宅が含まれていますから、二次的住宅を除いた空き家数で空き家率を求めると、やはり山梨県は17.2%と全国1位です(2位は愛媛県の16.9%、3位は高知県の16.8%)。

したがって、山梨県を今回の調査対象と決め、山梨県の中でも空き家率の高い地域と低い地域について、複数の指標と空き家率・空き家数を考察してみます。

山梨県内の空き家率

住宅・土地統計調査は全市町村を対象としておらず、統計データが存在するのは市町(町は人口1万5千人以上)までです。
山梨県内13市に絞り込み、空き家率を計算したのが以下の表です。

人口(H25) 住宅数(H25) 空き家数(H25) 空き家率(H25)
甲府市 195,020 108,600 22,560 20.77%
富士吉田市 51,496 21,160 3,560 16.82%
都留市 31,883 16,140 2,400 14.87%
山梨市 37,298 16,060 2,750 17.12%
大月市 27,537 12,600 2,460 19.52%
韮崎市 31,363 14,610 3,240 22.18%
南アルプス市 73,261 28,740 4,000 13.92%
北杜市 48,937 31,620 13,290 42.03%
甲斐市 74,373 34,480 5,540 16.07%
笛吹市 71,783 33,630 8,640 25.69%
上野原市 25,872 12,050 2,230 18.51%
甲州市 34,513 13,430 2,010 14.97%
中央市 31,327 14,940 2,230 14.93%

空き家率が高いのは北杜市(ほくとし)、笛吹市(ふえふきし)、韮崎市(にらさきし)の順、空き家率が低いのは南アルプス市(みなみアルプスし)、都留市(つるし)、中央市(ちゅうおうし)の順となりました。
北杜市は山梨県の中でも二次的住宅が極端に集中するため除外し、都留市と比較して二次的住宅の割合が高い中央市も除外しました。

残る4市を分類すると、次のとおりです。

人口規模 空き家率が低い 空き家率が高い
約3万人 都留市(14.87%) 韮崎市(22.18%)
約7万人 南アルプス市(13.92%) 笛吹市(25.69%)

空き家に関連しそうな指標の変化

人が住むための住宅である以上、人の動きや住宅の増減が空き家に影響しているのは、誰でも直感的に思うところでしょう。
また、同じ1世帯でも年齢や人員構成の違いが影響するはずです。

  1. 人口・世帯数の増減
  2. 住宅数の増減
  3. 過去の高齢単身世帯率
  4. 住宅地の地価変動率

今回調査したのは、空き家に関連しそうな以上の指標です。
人口・世帯数の統計である国勢調査は、住宅・土地統計調査と調査年が異なるため、人口と世帯数には推計値を用いました。

1.人口・世帯数の増減

人口・世帯数の増減と、住宅需要の増減はリンクするので、人口・世帯数が増えると空き家が減り、人口・世帯数が減ると空き家は増えていく予測ができます。
そして、人口よりは世帯数の方が空き家数に直結するでしょう。

ただし、その予測は住宅数が変わらない前提であり、実際には住宅数も増減しますし、1戸に複数世帯の存在もあって、単純には比較できません。

自治体・H25空き家率 H20~H25空き家数増減率 H20~H25人口増減率(推計) H20~H25世帯数増減率(推計)
都留市(14.87%) -12.73% -3.75% +4.10%
韮崎市(22.18%) +29.08% -4.62% +1.18%
南アルプス市(13.92%) +5.26% -0.65% +3.89%
笛吹市(25.69%) +32.31% -1.47% +2.07%

人口・世帯数とも、空き家数の増減とは同調していないことが分かります。
4市のすべて人口を減らしていますが、その割合は人口規模が影響しており、人口の多い笛吹市と南アルプス市は人口減少率が小さいです。

世帯に注目すると、世帯数を4%以上増やしている都留市で空き家数が減少、同じく4%弱増加の南アルプス市で空き家数が横ばいと、おおむね予測どおりの結果ですが、3割も空き家が増えた笛吹市・韮崎市でも、低い増加率ながら世帯数を増やしています。

2.住宅数の増減

1世帯が1戸に住むと仮定する前提では、住宅の増減数から世帯の増減数を引いた数が、空き家の増減数に近いと予測できます。
平成20年~25年の住宅増減数、世帯増減数、空き家増減数は以下のとおりです。

自治体・H25空き家率 H20~H25住宅増減数(A) H20~H25世帯増減数(推計)(B) (A)-(B) H20~H25空き家増減数
都留市(14.87%) +450 +542 -92 -350
韮崎市(22.18%) +840 +138 +702 +730
南アルプス市(13.92%) +1,930 +932 +998 +200
笛吹市(25.69%) +1,710 +531 +1,179 +2,110

住宅増減数から世帯増減数を引いた数と空き家増減数を比べると、近いのは韮崎市だけで、甘く評価して都留市を除いても、南アルプス市と笛吹市は明らかに計算が合いません。
世帯増減数が推計で不正確だとはいえ、両市は正反対の傾向です。

これほどバラバラの結果になってしまうと、広域的には世帯数の増減が空き家数に影響するとしても、各市には違う事情がありそうです。
住宅数と世帯数の増減だけでは、明確な傾向がつかめませんでした。

3.過去の高齢単身世帯率

視点を変えて、世帯構成から空き家の増減率を考えてみます。
高齢者の単身世帯は、子供の住む地域へ引っ越す、施設に入所する、亡くなるなどの理由で空き家になりやすく、空き家予備軍と言えるでしょう。

高齢者の単身世帯が空き家を増やしているのであれば、空き家が増える前の段階から調査しなくてはならず、平成12年・17年・22年の国勢調査を使って、高齢単身世帯率(65歳以上)の推移を見てみます。

自治体・H25空き家率 H12高齢単身世帯率 H17高齢単身世帯率 H22高齢単身世帯率
都留市(14.87%) 4.56% 5.74% 6.51%
韮崎市(22.18%) 6.11% 7.68% 8.54%
南アルプス市(13.92%) 3.96% 5.22% 6.34%
笛吹市(25.69%) 5.59% 7.13% 8.29%
山梨県全体(22.01%) 6.19% 7.53% 8.96%
全国平均(13.52%) 6.48% 7.93% 9.24

※南アルプス市と笛吹市は合併前の旧町村を含む

空き家率と過去の高齢単身世帯率は、関連性の高い結果となりました。
空き家率が低い地域は高齢単身世帯率が以前から低く、空き家率が高い地域は以前から高齢単身世帯率も高くなっており、空き家への影響が大きいことを示しています。

ただし、山梨県全体や全国平均との比較では、各市とも同等以下の水準です。
高齢単身世帯率は全国平均を下回っているのに、山梨県が(二次的住宅を除いても)空き家率でトップに位置しているのは、何か別の要因もありそうですが、高齢単身世帯率が低いほど、空き家が増えにくいのは確かなようです。

4.住宅地の地価変動率

空き家が増えるということは、住宅需要が小さいことを意味するので、連動して住宅地の地価が下がっていく傾向も見られるかもしれません。
住宅地の地価公示価格と地価調査価格を、平成20年~25年の平均値で追ってみます。

自治体・H25空き家率 H20~H25空き家数増減率 H20住宅地地価 H25住宅地地価 H20~H25住宅地地価変動率
都留市(14.87%) -12.73% 47,388円/㎡ 42,625円/㎡ -10.16%
韮崎市(22.18%) +29.08% 38,000円/㎡ 32,983円/㎡ -13.29%
南アルプス市(13.92%) +5.26% 30,317円/㎡ 24,607円/㎡ -18.54%
笛吹市(25.69%) +32.31% 32,467円/㎡ 26,440円/㎡ -18.41%

予想に反し、空き家があまり増えておらず、空き家率も低い南アルプス市で、最も住宅地の下落傾向が激しい結果となりました。
空き家率が高く、人口が同等の笛吹市もほぼ同じ変動率です。

地価変動率が小さかったのは、人口規模の小さい都留市と韮崎市で、両市の空き家数増減率が真逆を示しており、今回の対象とした4市については、住宅地の地価動向と空き家の増加に関連性は見られませんでした。

今後の展望と詳細な分析

これまでは、平成25年の空き家率と各指標から、空き家が増える予兆を探ってきましたが、高齢単身世帯率以外は傾向が確認できていません。
しかし、これからの空き家活用を考えていく上では、何らかの予測を立てなくてはプランも決まらないので、もう少し詳しく調べてみます。

世代別人口構成

高齢者の単身世帯が空き家に結び付きやすいのですから、人口全体の高齢者比率が高いほど空き家が多くなりやすい傾向は考えられます。
逆に、子育て世代は定住することが多く、空き家の増加を抑制するでしょう。

総じて少子高齢化が空き家を増やしていくと予測できるので、平成25年の住民基本台帳人口から世代別人口構成を割り出してみます。

自治体・H25空き家率 10歳未満 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上
都留市(14.87%) 7.81% 11.13% 11.89% 10.83% 13.41% 12.89% 13.30% 18.74%
韮崎市(22.18%) 7.98% 10.75% 10.31% 11.85% 13.54% 13.10% 14.74% 17.72%
南アルプス市(13.92%) 9.17% 11.16% 10.03% 12.84% 14.00% 12.65% 13.67% 16.48%
笛吹市(25.69%) 8.45% 10.41% 9.82% 12.45% 14.04% 12.10% 14.26% 18.47%

予測どおり、カギを握るのは少子高齢化となり、今後の展望は各市で異なります。
空き家の所有者は、地域の人口構成を調べておくとよいかもしれません。

・都留市(空き家率が低い)
10代・20代が多いのは都留文科大学の存在で、都留市の人口の1割に相当する3,000人規模の大学生が住宅需要を支えています(都留文科大学は県外入学が8割以上)。
大学生向けの賃貸住宅を除くと、将来の空き家増が非常に危惧されます。

・韮崎市(空き家率が高い)
おおむね年代が上がるほど、構成割合が大きくなる逆ピラミッド型になっています。
この人口構成から空き家を減らしていくためには、若者や子育て世代が移住してこなければ難しく、かなり厳しい状況でしょう。

・南アルプス市(空き家率が低い)
未成年と30代・40代が多い人口構成で、当面の空き家増には耐性があります。
20代が少ないのは、大学のない自治体では普通のことですし、子育て世代に評価されているのは、地域にとって大きなアドバンテージです。

・笛吹市(空き家率が高い)
極端ではないとはいえ20代までの構成割合が低く、30代・40代はまずまずですが、60代以上が多いので、全体として少子高齢化は否めません。
県都の甲府市に隣接していることも、若者の転出超過を招く理由でしょう。

空き家の用途別割合

空き家には別荘などの二次的住宅、賃貸用の住宅、売却用の住宅、それ以外の理由で空き家になっている「その他の住宅」があります。
地域でどのような用途の空き家が多いか知ることは、住宅ニーズ(空き家活用)を考える上で重要な情報になるはずです。

二次的住宅は、空き家というよりも「今は使われていない」だけの家なので、他の3種類について、平成25年の空き家率を調べてみました。

自治体・H25空き家率 H25賃貸用の住宅 H25売却用の住宅 H25その他の住宅
都留市(14.87%) 6.13% 0.25% 7.62%
韮崎市(22.18%) 12.53% 0.34% 8.01%
南アルプス市(13.92%) 7.10% 0.14% 6.02%
笛吹市(25.69%) 13.41% 1.28% 9.07%

空き家率の高い韮崎市と笛吹市は、賃貸住宅の空き家率が突出して高いです。
つまり、韮崎市と笛吹市は、賃貸住宅(特に共同住宅)の過剰供給が明らかで、これから賃貸住宅へ投資するのは難しいとわかります。

都留市や南アルプス市のように、賃貸住宅の空き家が少ない地域なら可能性はありますが、大学生の賃貸重要がある都留市と、子育て世代の多い南アルプス市を一緒に考えることはできません。

戸建て住宅率

空き家の用途別割合と類似した指標で、住宅全体における戸建て住宅の割合です。
戸建て需要の大小によって、空き家の売却・リフォーム、解体して共同住宅の賃貸・更地の売却など運用方法は変わってくるでしょう。

自治体・H25空き家率 H25住宅総数(A) H25戸建て住宅数(B) (A)/(B)
都留市(14.87%) 16,140  8,870 54.96%
韮崎市(22.18%) 14,610  8,770 60.03%
南アルプス市(13.92%) 28,740  20,770 72.27%
笛吹市(25.69%) 33,630  20,210 60.10%

戸建て住宅率が最も低いのは都留市、最も高いのは南アルプス市でした。
大学生世帯の多い都留市と、ファミリー世帯の多い南アルプス市では、人口構成に応じた住宅構造で建てられているために空き家率が低いのでしょう。

対する韮崎市と笛吹市は、賃貸住宅の空き家が多いので、需給バランスがずれていると考えることもでき、もしかしたらこの点が空き家活用のヒントになるかもしれません。

居住住宅数と世帯数

空き家とは反対に、人が住んでいる居住住宅数と世帯数の関係では、居住住宅数が世帯数を上回ると、複数の住宅を所有する世帯が多く、居住住宅数が世帯数を下回ると、複数世帯(二世帯住宅やルームシェア・下宿なと)が多いことを示します。

居住住宅数>世帯数 複数の住宅を所有する世帯が多い
居住住宅数<世帯数 二世帯住宅やルームシェア、下宿などが多い
自治体・H25空き家率 H25居住住宅数(A) H25世帯数(推計)(B) (A)/(B)
都留市(14.87%) 13,680 13,750 0.995
韮崎市(22.18%) 11,340 11,821 0.959
南アルプス市(13.92%) 24,690 24,892 0.992
笛吹市(25.69%) 24,810 26,136 0.949

各市のいずれも、居住住宅数を世帯数が上回っており、空き家率の高い韮崎市と笛吹市は、1世帯当たりの居住住宅数が0.95程度、空き家率の低い都留市と南アルプス市は、1世帯当たりの居住住宅数が1に近い水準(ほぼ1世帯1戸)です。

その差約0.05ポイントですが、甘く見ることはできません。
笛吹市の1世帯当たり居住住宅数が、0.949から0.999まで上昇して、複数世帯から分かれた単一世帯の全部が空き家に住むと、約1,300戸もの空き家が解消されるからです。

複数世帯から単一世帯に分かれる理由は人それぞれですが、外からの人口流入に頼らなくても、空き家が減る可能性はあるということです。
空き家率が高くても、絶望的ではないととらえて空き家活用を考えるべきでしょう。

まとめ

都留市、韮崎市、南アルプス市、笛吹市の特徴をかんたんにまとめてみます。
似たような特徴の地域は全国にあると思いますので、自分が所有する空き家の地域を思い浮かべてみてください。

  • 都留市:大学が賃貸住宅の需要を支え戸建て率が低い
  • 韮崎市:少子高齢化が進み賃貸住宅が過剰
  • 南アルプス市:子育て世代が多く戸建て率が高い
  • 笛吹市:県内の中心市に隣接して賃貸住宅が過剰

様々な指標を調べて現状を分析するのは、手間がかかる上に空き家活用へ結び付かない可能性もあるので、時間に余裕がないとなかなか難しいです。

それでも、特別なスキルは必要なく、公表されている統計データを集めるだけでも、地域の住宅ニーズや将来の人口構成などを推測できますから、空き家活用を考える基礎資料として、情報収集に取り組んでみるべきでしょう。

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