空き家放置で起こりうる問題やトラブル

空き家の放置
全国的に空き家の増加は問題として提起され、約820万戸とされる空き家の中には、管理されずに放置されたままの状態も少なくありません。
実家を相続した、転勤したなどの理由で、手をかけられないのが主な原因です。

所有者にとっては、自分の家なのだから好きにしたいと思うところですが、空き家を取り巻く環境は徐々に変化しており、空き家の放置はマイナスに向かっています
空き家を放置すると、どのような懸念があるのか考えてみましょう。

1.老朽化が進む

構造に関係なく、古くなった家は必ず老朽化するのを避けられません。
その程度は違うとしても、年数に応じて老朽化し、適度に修繕していかなければ、躯体を維持することもできなくなります。

特に木造住宅は、空き家にすると傷むというのを聞いたことはないでしょうか?
この場合の傷むとは、自然発生的な老朽化のことを意味しており、住み続けることで当然に起こりやすい破損などは含まれていません。

なぜ空き家だと老朽化が早まるのか?

一般には、老朽化の原因は湿気だと考えられており、木材を腐らせる菌(木材腐朽菌といいます)の繁殖には、温度や酸素も関係するのですが、居住中と空き家で最も異なるのは湿度だと言われています。

開口部を開けたままや、外部から室内の様子がうかがえる状態で空き家にすることは少ないので、一般に空き家は閉め切られた状態が維持されます。
多くの人は虫の侵入を防ぎたいので、通気口も閉じているでしょう。

そうすると、換気や採光がされないまま長時間放置されるので、気密性の高い住宅ほど湿気が内部にこもり、梅雨の時期に空き家が始まった住宅では顕著です。
もちろん、住んでいて発生する水蒸気も影響を与えますが、生活していると何らかの循環が行われるのに対し、空き家では湿気が滞留して老朽化が早まるとされます。

2.資産価値が下がる

家は居住していても空き家にしていても、年々価値は下がります。
それだけではなく、日本全体で人口・世帯数減少が始まっているため、過疎化が進んでいる地域になると、周辺に住む人も少なくなり、地価も下落していきます。

宅地の価値は市街化の度合いに影響されますから、空き家を放置していると、家と土地の両方で同時に価値の下落が起こる可能性もあります
直接の出費ではないですが、価値の下落も維持費として見積もっておかないと、お金をかけて維持する以上に損失を受けてしまいます。

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近年は、市町村が行政サービスの効率化を目指し、コンパクトシティを構想している例が多く、居住誘導区域外になることで買い需要が減り、価値の下落が加速することも1つの懸念材料として考えられるでしょう。

3.周囲への悪影響やトラブル

空き家が老朽化しても、個人財産として影響するだけなら自己責任でも、周囲に悪影響を与え、トラブルになってしまうようなら考えものです。
今は問題なくても、将来空き家が与える悪影響を考えてみましょう。

倒壊・破損・散乱など

いずれも、周囲への影響が大きく、倒壊に至らなくても、地震による外壁の剥落、台風による屋根材の散乱等による被害は可能性として十分考えられます。
もちろん、これらは住んでいても起こるものですが、住んでいると危なくなったら適切に修繕するのに対し、常時監視されない空き家のほうが危険は高まります。

建物の所有者には管理責任があり、瑕疵(不具合)で他人に損害を与えたときは、民法第717条によって損害に対する賠償責任を負います

民法第717条

  1. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
  2. 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
  3. 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

工作物の設置または保存の瑕疵(欠陥や過失)による、損害賠償責任の規定です。
空き家が工作物に該当することは言うまでもなく、所有者は空き家が他人へ損害を与えないように注意しなくてはなりません。

具体的には、家屋やブロック塀の倒壊で他人に損害を与えた場合、屋根材(瓦やトタン)が台風で吹き飛び近隣に損害を与えた場合などが考えられます。
物損ならまだしも、死傷させたときは重大な損害賠償責任を負うでしょう。

また、同条第2項では「竹木の栽植又は支持の瑕疵」でも準用するとしています。
空き家で該当するとすれば、庭木の支持が不十分で倒れた場合、生垣が手入れされず道路にはみ出している場合などです。

特に庭木や生垣が道路にはみ出していると、接触による損害以外にも、回避した結果起きた交通事故など、間接的な損害も起こり得るので軽視できません。

不審火、自然発火による火災

空き家が放火の対象になりやすいことはよく知られており、火災は近隣への損害が回避できず、その法的責任が問われます。
関連する法律は失火責任法ですが、重過失以外は基本的に所有者責任を問われません。

ただし、法的な責任がないからといって、道義的な責任もないかというと別問題で、管理不十分で火災を防止できなかった責任は残ります
お詫びとしてそれなりに出費を伴いますから、リスクとして考えておくべきです。

失火責任法

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

(民法第709条の規定は失火の場合にはこれを適用せず。ただし、失火者に重大なる過失ありたるときはこの限りにあらず。)

一文だけの法律で、民法上第709条の不法行為による損害賠償責任は、失火(過失による火災)の場合に適用されないことを規定しています。
ただし、失火者に重大な過失があれば、損害賠償責任を負うとも規定されています。

この規定は、空き家で自然発火が起き隣家に損害を与えた場合でも、重大な過失の有無によって損害賠償責任が変わることを意味しています。
重大な過失の定義は意見が分かれるところで、火災の可能性を予見しながら防止しなかったとすれば、重大な過失と認定されるかもしれません。

自然発火する可能性として、コンセントプラグのトラッキング現象があります。
空き家なので通電させることは少ないかもしれませんが、最近は24時間換気システムや、防犯用の照明が付いている家も増えているので覚えておきましょう。

庭木や草花の繁茂

庭木が敷地からはみ出たことによる損害は、民法第717条の適用になりますが、それ以外にも、民法第233条では越境について規定されています。
近隣トラブルの例としてよく聞く枝だけではなく、根も対象となっています。

また、手付かずのままでいると、いかにも空き家と露呈してしまい、放火・不法侵入など、複合的にトラブルを引き起こしやすいです。
このように、所有者として空き家の庭木や草花の管理が必要なことは、社会通念上だけではなく、法律からも常識レベルです。

民法第233条

  1. 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
  2. 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

隣地の竹木が境界を越えたときを規定しており、枝の場合は越境した側へ枝の切除を要求でき、根の場合は越境された側が根を切り取ることができます。

実際に、根を切除されるほどではないとしても、枝の切除要求は十分考えられます。
空き家の敷地内にある竹木は、境界を超えないように管理する必要があります。

治安と衛生

不法侵入を許すことによる治安の悪化、不法投棄や害虫・害獣・犬猫等が棲みつくことによる異臭・悪臭が該当します。
これらは、直接の被害者が自分であっても、周辺への影響が懸念される時点で問題視され、放置することで近隣トラブルを引き起こします。

例えば、不法投棄されたゴミにハエや蚊が群がって周辺に飛散する、ススメバチが巣を作って飛び回っている、ネコが大量に棲みついて夜中にうるさいなど、一般には近所迷惑でしかなく、行政に苦情が入るでしょう。

これらの近所迷惑を起こす要因が、所有者の責任であるかどうかは難しいですが、通常の管理で対処できる内容なら、責任を問われても不思議ではありません。
苦情が入れば、ほぼ確実に行政から指導されるので、結局のところ対処は必要です。

景観上の問題

見た目だけで苦情が入ることはないとしても、景観条例を制定している自治体(ただし通常は景観保全地域を定めている)では、周辺と比べて著しく景観上の問題がある空き家は、是正するように所有者へ指導が入るかもしれません。

もっとも、景観上の問題が起きるほど空き家の老朽化が進むと、他の問題の方が先に顕在化するため、景観上の問題だけが取り上げられることは少ないでしょう。
したがって、所有者が先に対処すべき内容は、景観上の問題よりも他にあります。

4.住宅用地特例の適用除外や強制解体

これまで説明してきた民法失火責任法は、空き家であることを前提としておらず、居住中でも同様の損害を与えると適用されます。
そして、近隣トラブルは個人間の問題として、当事者で解決するのが当然でした。

しかし、空き家に特化した法律として、空き家対策特別措置法が施行され、管理が行き届かず危険のある空き家は、行政の介入が可能になっています。
この点はこれまでと異なるため、必ず理解しておかなくてはなりません。

法律上、空き家の所有者は適切な管理をしなくてはならず、管理が不十分で再三の行政指導を無視したときは、軽減措置の対象から外したり、行政が必要な措置を強制的に行うこともできます
空き家=即強制対処ではなくても、放置すれば対象になると自覚しておきましょう。

固定資産税が3~4倍に

住宅の敷地には、住宅用地特例という税制上の軽減措置が設けられ、固定資産税を算出する過程において、住宅の敷地は最大で1/6に軽減されます。
軽減される要件は、住宅として使用していることなので、空き家では適用されません。

ただし、普通に考えて、完全な空き家と一時的な空き家の区別は付かないでしょう。
そのため、これまでは空き家であっても行政が実態を把握できず、固定資産税の軽減措置を適用したままの状態になっていました。

この状態は、所有者が固定資産税の負担増を嫌い、問題のある空き家でも解体が進まないと以前から問題視されており、空き家対策特別措置法で対応されています。

固定資産税の軽減措置が外されるのは、「特定空家等」と呼ばれる空き家だけで、法律上は次のように定義されています。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

まず、行政は空き家について調査を行い、上記に該当すれば特定空家等とみなします。
そして、特定空家等に対して改善するように助言・指導がされ、所有者が応じないときは、続いて勧告されることで、固定資産税の軽減対象から外れます

固定資産税がどのくらい上がるかについては、敷地の広さによっても変わりますが、一般的な住宅の敷地なら、都市計画税を含めても3倍から4倍程度でしょう。
結構な金額なので、特定空家等にならないよう管理が必要だということです。

行政代執行による強制解体

上記の勧告でも、実質固定資産税増額というペナルティが課されますが、それでも改善がみられなければ命令へと変わり、命令にも応じなければ代執行へと進みます。
代執行とは強制執行で、空き家の所有者がするべき義務、つまり空き家の解体等を行政が自ら(ほとんどは行政に委託された業者が)行います。

当然ながらその費用は、空き家の所有者・管理者に請求されることになります。
また、代執行は所有者不明により、命令することができない場合にも行われます。

空き家特別措置法第3条

空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。

空き家の所有者・管理者が、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないように、適切な管理に努めるものとする規定です。
努力義務規定ではありますが、この規定があることで管理責任を問われ、法的な措置を命じられる理由になります。

空き家特別措置法第14条

  1. 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
  2. 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
  3. 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
  4. 市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
  5. 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から五日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
  6. 市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第三項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
  7. 市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第三項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の三日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
  8. 第六項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
  9. 市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
  10. 第三項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第一項の助言若しくは指導又は第二項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第三項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
  11. 市町村長は、第三項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
  12. 前項の標識は、第三項の規定による命令に係る特定空家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
  13. 第三項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。
  14. 国土交通大臣及び総務大臣は、特定空家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。
  15. 前各項に定めるもののほか、特定空家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。

著しく保安上危険となるおそれ、著しく衛生上有害となるおそれがある空き家は、市町村長により必要な措置をするように助言・指導できると規定されています。

まとめ

空き家をどうするかは個々の事情もあり、思い入れのある家は処分をためらうので、決断できずにとりあえず放置しているケースも多いかもしれません。
しかし、使う予定がないのであれば、老朽化して近所迷惑になる前の段階で、解体に踏み切ったほうが精神的には楽になります。

経済的な側面で判断するなら、空き家の維持費用(管理委託費・水道光熱費、固定資産税・都市計画税等)と、解体後の固定資産税・都市計画税を比べます。
解体後の方が高い場合でも、価値の下落と修繕費の存在を忘れてはなりません。

もし、維持費用の方が高ければ解体の一択となりますが、解体費用がネックです。
行政から指導を受ける特定空家等では、解体に補助金制度も導入されているので、役所に相談して現状を判断してもらいましょう。

今は空き家を残すとしても、いずれ住む・貸す・売る・解体を判断するときが来ます。
現状維持がその過程ならまだしも、とりあえず放置して老朽化するのは、経済的損失だけではなく、社会的にも許容されない時代が来ていると自覚するべきなのです。

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