資源エネルギー庁の資料によれば、太陽光発電のランニングコスト(維持費)は、住宅用で3,000円/kW・年、非住宅用の維持費は5,000円/kW・年とされています。
この数字は、平成29年度の買取価格が決定される際に使われたものです。
住宅用で4kWなら年間平均12,000円、非住宅用で100kWなら年間平均50万円となりますが、非住宅用は規模が小さくなると低圧連系になって、変圧設備や保安上の義務が軽減されるため、トータルの維持費も少ないでしょう。
今回は、太陽光発電のランニングコストについて、どのような費用を考えておくべきか、項目別に解説していきます。
電気代
パワーコンディショナーは自立運転が可能なことから分かるように、パネルで発電された電力を使って作動しますが、発電がない夜間等の待機電力は別です。
つまり、何らかの買電が必要となって、毎月電気料金がかかるということです。
余剰買取では自家消費と同じなので、他の電気代と合計されてしまいますが、全量買取では別途電気使用契約が必要になります。
その際の契約はパワーコンディショナーの台数に応じた定額料金になり、従量料金で使われる買電メーターは付かないのが通常です。
電気代はパワーコンディショナーの種類・台数、単相か三相かなどでも違い、個人で運営する規模では、定額電灯契約で1台数百円レベルが多いようです。
それでも、月に数百円が年間で数千円、10年もすれば数万円となっていきます。
点検や清掃関係
基本的に故障しない工業製品は無いに等しく、メンテナンスが不要と考えられている太陽光発電でも、定期点検をするに越したことはありません。
また、発電量を下げないためにも、パネルの清掃が必要になるでしょう。
点検費用
住宅用は法定義務がなく、4年に1回以上の定期点検が推奨されています。
点検費用の相場は1回で2万円というのが、買取価格の算定基礎になっています。
非住宅用の50kW以上は、法定点検が必要で、電気主任技術者を選任するのですが、2,000kW未満までは外部委託可能です。
その委託費用は、一般に年間50万円~100万円程度 と言われています。
清掃費用
パネルは自然に汚れますが、同時に風雨で汚れが落ちていくのも確かです。
しかし、どのようなパネルでも鳥のフンや虫の死骸といった、乾くと流れ落ちない汚れまで、自然洗浄を期待するのは無理があります。
特に野立てでは、傾斜角と風圧、土地の利用効率の関係から、屋根に比べて平らな設置も見られ、そうすると汚れが雨で落ちにくくなるでしょう。
清掃費用の相場は、規模によって大きく変わってきます。
屋根設置では、高所作業になること、規模が小さく人件費比率が高いことで、1kWあたり5,000円~1万円程度の料金が多いです。
野立ての場合、小規模なら一式価格で数万円、または1kWあたり2,000円~5,000円程度、メガソーラークラスなら1kWあたり1,000円レベルまで下がります。
なお、これらの料金は高圧洗浄だけなのか、拭き取りをするのか、洗浄剤(または純水)を使うのか、そもそも水を用意できるのか等の条件次第です。
交換や修理にかかる費用
多くは保証期間内で無償対応になると思われますが、長期間使用することで、パネルは劣化して発電量が落ちていきます。
劣化なら故障とまでは言えなくても、性能改善をしようとすると、保証期間を超えた場合、基本的に有償での交換対応です。
パワーコンディショナーについては修理が可能で、基板交換だけなら数万円、全交換となると1台平均20万円前後はかかります。
しかしながら、将来のコストは下がっている可能性も多分にあり、現在の価格よりは安くなることが想像できます。
もう1つ、交換対象になるのが売電メーターで、こちらは10年で交換です。
その費用が、電力会社負担か使用者負担かは電力会社次第になっており、工事店によっても異なるため定まっていません。
保証延長や保険料
太陽光発電の設備は、多くのメーカーが10年以上の保証期間を付けており、販売価格に転嫁されて消費者が負担しています。
パネルについては、20年という保証期間もありますが、パワーコンディショナーをはじめとする機器類は、10年の設定が多いです。
この保証期間を有償で延長するサービス(50kW未満)が、シャープ・東芝など複数のメーカーから提供されていて、1kWあたり5,000円~10,000円の費用で、5年間保証期間を延長できます(東芝は10年も可能、三菱はパワーコンディショナー1台16,000円)。
通常の保証期間である10年を超えると、パワーコンディショナーの交換は高いので、先に延長しておいて、リスクを軽減しようとする考えです。
ただし、延長した期間内で壊れなければ、無駄な費用ということになってしまいます。
また、太陽光発電設備を動産として、火災保険、動産保険、売電収入補償の保険もありますが、保険料は個別に見積もりするしかありません。
災害については、メーカー保証で補償されるケースもあるので検討してみましょう。
税金
太陽光発電にも税金がかかると聞いて驚くでしょうか?
しかし、設備は償却資産として扱われるため固定資産税の対象になり、売電収入は必要経費を除いた所得として所得税の対象です。
固定資産税
事業ではない住宅用の10kW未満(余剰電力)以外はすべて対象、10kW以上でも屋根に一体化したパネルは償却資産ではなく、家屋の一部という扱いです。
償却資産は、価値が毎年失われるので、評価額を下げながら課税していきます。
太陽光発電設備の場合、1年目は取得価格に0.936を乗じた価格、2年目以降は前年度の評価額に0.873を乗じた価格が評価額となり、評価額の1.4%が税額です。
取得価格を500万円と仮定して、固定資産税額を具体的に計算してみましょう。
実際の金額は端数処理されるので、計算結果はイメージです。
評価額=5,000,000万円×0.936=4,680,000万円
固定資産税額=4,680,000万円×1.4%=65,520円
評価額=4,680,000万円×0.873=4,085,640円
固定資産税額=4,085,640万円×1.4%=57,198円
このように徐々に減って、償却資産の課税対象は150万円以上と決まっているため、最終的には評価額が150万円未満になるまで課税が続きます。
なお、平成28年4月1日から平成30年3月31日までに取得した場合、固定買取制度を利用しておらず、かつ再生可能エネルギー事業者支援事業補助金の対象となった太陽光発電設備には、3年間だけ2/3に軽減される特例があります。
所得税
太陽光発電で得られた所得は、事業として行っている又は事業と併せて行われていれば事業所得、給与所得者が行っていれば原則は雑所得という扱いで確定申告します。
所得とは、売電収入から必要経費(減価償却費)を控除した残りの金額です。
事業所得者の場合には、毎年確定申告をしますので問題ないでしょう。
問題があるとすれば、確定申告に慣れていない給与所得者で、しかも給与所得者は、住宅用で余剰買取をしているケースが多いため、少し面倒です。
全量買取(10kW以上)の場合
全量買取の場合、取得費用の全額を対象に減価償却した金額を必要経費として、売電収入から控除した金額が所得になります。
所得=売電収入-減価償却費
※1年目は減価償却費×使用した月数÷12
なお、給与所得者が全量買取をしていても、事業として行っていなければ雑所得扱いになり、売電による所得が20万円を超えると申告が必要です。
余剰買取(10kW未満)の場合
余剰買取の場合には、自家消費された残りが売電されるので、全量買取よりも売電収入は減るのに合わせて、必要経費も売電できた割合までしか認められません。
ですから、控除できる減価償却費の計算には、発電量と売電量が関係してきます。
所得=売電収入-減価償却費
※1年目は減価償却費×使用した月数÷12
減価償却費が少なくなるとはいえ、元々売電収入が少なく、給与所得者が雑所得で申告するケースはかなり少ないと考えられます。
例えば、上限近くの9.9kWのシステムで、年間発電量を12,000kWhとします。
8割を30円/kWhで売電すると288,000円ですが、雑所得で申告する20万円を超えるためには、減価償却費が88,000円未満でなくてはなりません。
9.9kWのシステムなら300万円はしますから、売電した8割相当は240万円で、0.059を乗じて得られる減価償却費は14万円以上となり、所得が20万円に届きません。
つまり、想定外に多く売電した、想定外に安く購入したケース以外は申告不要です。
まとめ
太陽光発電はメンテナンスフリーのように言われますが、そうではありません。
ただし、無償対応してくれる保証期間に限って言えば、メンテナンスフリーではないものの、修理・交換に費用がかからないのは事実です。
しかしながら、20年・30年という長期間で考えた場合、設備故障への対応、適切な発電量を得るための清掃や点検、固定資産税の存在など、トータルでの維持費は意外に多いと感じたのではないでしょうか?
それらをすべて売電収入でまかなっていくためには、固定買取期間でどれだけ余裕を作っておくかが重要で、元を取れればよいくらいの気持ちではなく、買取保証期間終了前に回収は終わっておくつもりで導入を検討するべきでしょう。
主な初期費用はこちらでまとめていますので、合わせてどうぞ。