資材・自然・土地の3つで考える山林活用の可能性

森林

自然豊かな田舎だからこそ多い問題として、相続による山林の所有があります。
しかも、相続があって初めて親が山林を所有していたと知るパターンも多く、山林だけ相続放棄はできないことから、仕方なく相続するケースも多いようです。

親が山林を所有していた経緯は、先祖代々の土地、誰かに譲ってもらった、投資先としてなどの理由だとしても、現在の山林を取り巻く状況は決してよくありません。
立木は収入源であると同時に、山林活用の足かせにもなってしまうからです。

山林の活用を考えた場合、立木を資源とみるか、山林を自然として捉えるか、土地の活用を図るかによって、手法は異なってきます。
いずれにしても売却ではないので、売却が前提ならこちらをご覧ください。

山林の売買について。過去の事例から見る価格相場と税金
日本の山林(森林)は約58% が私有林です。しかし取得ルートは譲渡や相続が多く、活発に売買されてはいません。ここではその実態を価格や税金面を交えて見ていきます。

1.立木を資源とみる場合

資材

伐採が許される環境だとして、木材としての需要は確実にあることから、立木(たちき)を処分して利益を得られる可能性がないわけではありません。
山林の立木は独立して価値を持っており、立木を処分しても土地は残るからです。

しかし、現在は林業を専門にする林家であっても、木材販売で生計を立てているケースは、平成22年の調査において、わずか5%しかいません。

林野庁 林業の動向

林野庁「森林・林業白書」より

相続で山林を取得した林業の素人が、立木で利益を得るのは絶望的と言えます。

販売できる木材の育成には手間がかかる

山林を取得した人の中には、木を植えたら育つまで放置し、伸びたら伐採してまた植えればよいと思っている人が多くいます。
つまり、スパンは長くても農作物のように立木を収穫するというイメージです。

ところが、植栽してから原木として伐採するまでの間には、多くの手間がかかります。
植えたまま放置すると、生い茂った枝が日照を遮り、木の成長で間隔が狭くなってさらに日照が遮られるため、「枝打ち」「除伐」「間伐」をしなくてはなりません。

「枝打ち」とは下層の枝を切り払うこと、「除伐」とは不要な樹木を取り除くこと、「間伐」とは樹木を間引く作業で、間伐した樹木も販売の対象にはなります。
また、植栽から10年生(樹齢)程度までは、木が成長するよりも地面の草が早く伸び、下草を刈って成長を妨げないようにすることが大切です。

これらの手入れは人的なコストを伴いますが、だからといって手入れをしないと、そもそも販売できる木が育たないので、木材の販売をするなら不可欠です。

山間部を車で走ると、枝打ちされ適度な間隔でまっすぐ伸びている山林は明るく、手入れのない山林は薄暗いのが分かります。
薄暗い山林で得られる原木は、本数が多くても枝が節となり、細く曲がって質が悪く、山林全体が不健康になって価値を落としていくのです。

したがって、定期的に間伐などの手入れをした山林に比べ、手入れをしない(コストをかけない)山林は、木材の販売収入は極めて少なくなります

木材の育成は赤字経営

平成25年度の森林・林業白書によれば、スギ人工林において、50年生での販売収入は試算143万円/haに対し、50年生までの経費は平均231万円/haと大赤字です。
こうした採算性が、ビジネスモデルとしての林業を発展させない理由でもあります。

特に、苗木代と植栽作業が発生する初年度から、下草刈りが必要な10年間程度が経費の7割を占めており、最初の10年に投資して、その40年後に一部しか回収できないのでは、誰も始めたがらないのも納得できます。

山林の管理は森林組合に委託できますが、当然に委託費用は発生しますから、木材販売を目的として、山林から利益を出していくのは相当難しいでしょう。

木炭・竹炭・薪

薪

木は木材としてだけではなく、燃料としての役割を現在でも果たしています。
薪ストーブ以外にも、アウトドアの火力は薪や炭に頼りますし、窯業では窯に火をくべるための薪を必要とするように、一定の需要はあります。

また、薪でも炭でも、間伐材や枝など木材として売れない部分も対象になりますし、無駄を少しでも減らせるなら、積極的に利用したいところです。

しかし、これらの用途では原木を加工してもらわなくてはならず、加工費を支払って販売したときに、果たして採算が取れるのかという問題が残るでしょう。
加工費としては、炭よりも薪の方が安いのは言うまでもありません。

薪ストーブの人気で近年は需要が高まり、インターネットでも薪が売られています。
販売コストは格段に下がりましたが、木材育成の赤字+加工費をプラスにするだけの販売量を確保するのは、大規模に行わないと無理そうです。

ただし、相続した山林では既にある立木を使えるので育成コストがなく、木材にならない立木の用途として、薪や炭は有効かもしれません。

2.自然として捉える場合

自然

山林には豊かな自然があり、動植物や景観・環境を目的として、他者に訪れてもらったり、生産物を商品としたりする活用方法も考えられます。
実は、林業による生産額の半分は、木材以外の林産物が占めており希望が持てます

しかし、遠隔地等の理由で山林の所有者が直接関与できないと、山林を貸し出す以外に何も手立てがありません。
したがって、その場合は第三者に転貸してもらう形にはなりますが、どういった活用方法があるのかだけは知っておくとよいでしょう。

特用林産物の活用

得用林産物

木材以外の林産物(特用林産物と言います)の中で、8割を占めるのがきのこ類です。
輸入品に押されてはいますが、スーパーでもよく見られるように、きのこ類は国産品への需要も高い分野です。

山菜やタケノコも愛好家が多く、体験ツアーが企画されるくらいなので、山林を解放することで需要に応えることは可能です。
ただし、当然ながらきのこ類や山菜類が自生していなければなりません。

他にも果物や木の実類、きれいな沢があればワサビ・クレソンなども考えられますし、植物に限らず、カブトムシ・クワガタ等も都市部の子供達には人気です。
いずれにしても、何か収穫物を得られる環境を必要とします。

ところで、田舎ならツアーに行かず、自由に山に入ればよいと思うでしょうか?

厳密に考えると、きのこ採りや山菜採りなど産物(昆虫等を除く)を収穫するのは、山林の所有者が許していない限り、他人の所有物を無断で採集している窃盗行為です。
しかしながら、一般的にこれらの行為は、個人で楽しむレベルでは許容・黙認されており、趣味として市民権を得ているのも確かです。

きのこ採りや山菜採りを違法と感じている人は少ないとはいえ、山林の所有者から許可を得て、気兼ねなく採りたいと思っている人も中にはいます。
また、体験ツアーではガイドが同行するので、マナー違反等の心配もなく安心です。

そこで、ツアー企画者を探して場所を提供するのですが、地元に需要は少なく、周辺都市部やある程度離れても大都市があると、それなりに企画されているはずです。
活用方法に行き詰まったら、候補の1つとして検討してみましょう。

レクリエーション用地として

レクリエーション

地元の自治体など、公益性の高い組織(学校や自治会・町内会を含む)が対象です。
地域住民のレクリエーションとして、または遠足や懇親会などの目的で、来訪者がリラックスして楽しめる場として山林を使ってもらいます。

公益性の高い組織は、基本的に無償で解放または使用するため、収益を上げる方法としては適しませんが、地域貢献という精神的な満足感を目的とします。
加えるなら、簡易な管理をしてもらえる可能性があるくらいでしょうか。

利益を出すとすれば、キャンプ場やアスレチック施設を設置、もっと規模を広げるとコテージなども視野に入れて利用料を得る方法があります。
川があれば、自然に近い河川型の釣り堀も、家族連れには人気のレジャーです。

規模が大きいと造成等もありますから、個人で投資するのは難しく、レジャーを手掛ける事業者に土地を貸す形態になるでしょう。

NPO法人や市民団体に使ってもらう

日本全国に、「森林ボランティア」と呼ばれるNPO法人や市民団体が存在します。
森林ボランティアは、自主的に森林整備を行い、健康な森林づくりを目指すグループで、地域の森林を活動拠点としています。

ボランティア活動なので利用料など取るどころか、逆に支援してもよいくらいの存在ですから、活動拠点に提供して山林を見てもらうのもアリでしょう。
管理とはいかなくても、定期的に人が入れば不法投棄などの防止にもなります。

森林ボランティアの多くは、国土緑化推進機構という社団法人に登録されています。

国土緑化推進機構 全国の森林づくりボランティア団体一覧

また、森林浴を療養に活用しようとする試みもあって、山林の活用方法は、利益を度外視すれば意外と残されています
地元や近郊のNPO法人や市民団体を調べ、森林関係なら問い合わせてみると、使いたい団体があるかもしれません。

3.土地の活用を図る場合

山林に手をかけることができなければ、土地として別の活用を考えてみましょう。
売却以外では、太陽光発電か賃貸という手も残されています。

太陽光発電

山林太陽光発電

自ら太陽光発電を行う場合と、太陽光発電用地として賃貸する場合の両方あります。
太陽光をエネルギーとする太陽光発電は、樹木で日照が遮られると発電量が低下して、うまく発電できない可能性を持っています。

したがって、設置には方角を選び、時には伐採も必要とするなど、特に山林ではどこでも成り立つような事業ではありません。
他にもクリアするべき課題が多く、採算性を十分に見据えて開始するべきです。

これらの懸念は、太陽光発電用地として貸し出すことで回避できますが、太陽光発電が成り立つなら、用地を貸すよりも自分で行った方が断然収益を得られます。

太陽光発電について詳しくはこちら で説明しているのでご覧ください。

山林で行う太陽光発電。伐採・造成・地目変更の課題と収支
放置されることが多い山林も、太陽光発電の場所として活用されるケースが見られるようになりました。越えなければならないハードルは多い土地ですが、その特徴をみてます。

宅地として賃貸する

山林に家を建てたい需要がどのくらいあるかは正確に掴めるはずもなく、どうしても受け身になってしまうのは仕方ないですが、少しは需要が見込めます。
しかし、建築が規制される土地もあり、根拠としては「都市計画法」「建築基準法」です。

まず、「都市計画法」ですが、山林が都市計画区域内にあり、なおかつ市街化調整区域にあると基本的に建築が制限されます。
これは、市街化調整区域が市街化を抑制するために設けられた区域だからです。

都市計画法による区分 都市計画区域内の区分 建築の可否
都市計画区域 市街化区域 建てられる
市街化調整区域 建てられない
非線引き区域 建てられる
準都市計画区域 建てられる
都市計画区域外 建てられる

また、「建築基準法」においては、都市計画区域と準都市計画区域にあると、集団規定といって様々な規制(用途、高さ、接する道路など)があります。
つまり、都市計画区域外でなければ、何らかの規制を受けると思いましょう。
※都市計画区域外だからといって、何でも建てられるわけではありません。

山林の場合は都市計画区域外に該当する地域が多いので、あまり意識するほどではないにしても、家を建てる目的で家が建たない土地を借りる人はいないので要注意です。
所有者としては、宅地として貸せる山林であるか確認しておくべきです。

他にも、ライフライン(電気・ガス・水道)の問題はありますが、山林に家を建てたい人が、都市部と同様の利便性を求めるとは考えにくく、大きな問題とはならないでしょう。

林業への賃貸の可能性は?

理屈としては、立木を得るための土壌として山林を賃貸する方法もあります。
借主は借りた山林で木を育て、伐採して収入を得るのですが、山林の安い固定資産税負担を軽減するに過ぎず、よほど広くなければ購入の話になるでしょう。

それでも、同じように固定資産税が安い農地においては、借りて耕作を行う形態がみられることから、林家や林業を営む法人が借りてくれる可能性は残されています。
ただし、その地域で林業が行われていないと、賃貸は現実的ではありません。

自治体や森林組合の制度を利用する

各自治体には緑地保全を目的とした制度があり、一定期間の使用貸借契約を結んでの保全や、場合によっては「市民の森」として一般に開放する施策も存在します。

横浜市 緑地保全制度パンフレット(平成26年10月時点)

固定資産税の減免などのメリットがあるので、収益を上げるよりも負担を減らす方向で考えれば、使用貸借(無償)でも検討の余地はあります。

他にも、ツリーハウス・ログハウスを建てたい、子供に自然と触れ合う場を作りたいなどの理由で、都市部から山林の一部を借りたいという需要が考えられます。
こうした需要に応えるため、山林・竹林を区画して個人に貸す事業も行われており、しかも都合が良いのは、自治体や森林組合 が介在して公募するケースもあることです。

兵庫県篠山市 里山(薪林)オーナー募集
香川県 里山オーナー制度
福岡県筑前町 竹林オーナー募集

賃貸料は年間で数千円~1万円/区画程度(区画の大きさは決まっていない)とはいえ、放置するくらいなら、誰かの役に立って僅かな賃料を受け取る方がマトモです。
役所や森林組合に問い合わせて、こうした制度が存在しないか確認してみましょう。

まとめ

相続した山林が、活用方法に困って放置されるのは、全国共通でみられます。
そもそも収益の上がる活用方法を誰も見つけられないから困るのであって、山林の活用には厳しい現実があり、本業の林家でもほとんど食べていけないくらいです。

ですから、木材としての立木を販売するのは、山林を立木込みで借りたい・買いたいという需要に応える程度で、安定して利益を出すのは無理だと思った方が無難です。

また、山林は何十年何百年という単位で「育てるもの」であり、ほんの数年放置しただけで、様相が変わってしまうほど繊細な一面も持っています。
不動産でありながら生きていると捉えれば、かなり特殊な物件ですし、他の不動産と同じに考えてしまうと、まったく活路が見えてきません。

その一方で、利益を度外視して考えると、自治体や地域の団体、山林を林業以外のビジネスで使っている事業者など、引き合いがまったくないとも言えないでしょう。
もしかしたら、山間部を通る高速道路、ゴルフ場などのリゾート開発、電力会社の鉄塔敷設、林業の企業が用地拡大等で、買い取りを打診してくる可能性もあります。

その確率は低いですが、保有し続けても意味がないと考えずに、健康な山林を保つことを第一に、将来への期待感を膨らませるのも一考です。

不動産会社8社に査定を依頼したら(山林)
不動産会社8社に査定を依頼したら330万円の差があった

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