農地バンクとは?利用のメリットデメリットと問題点について

農地バンク

アベノミクスは金融政策や財政政策ばかりに目が行きますが、「3本の矢」最後の成長政策の1つに、農業改革があります。

しかしこの農業改革、現状は上手くいっているとは言いがたく、批判の的にもなっています。

いわゆる農地バンクと呼ばれるこの制度の仕組みとこれまでの実績・課題を、農地を持つ人の目線で考えます。

農地バンクの概要

農地バンクとは、貸したい・売りたい農地を集め、借りたい・買いたい農業経営者に提供していく仕組みで、都道府県別に設置された農地中間管理機構が担っています。
農地バンクは通称で、「農地集積バンク」や「農地中間管理機構」と呼ばれることもありますが、ここでは一般に浸透している農地バンクとします。

農地バンクが作られた背景

日本の農業は小規模農家が支えており、戦後の農地改革では、地主が小作人にさせていた農業から、政府が介入して農地を小作人に分配した経緯もあります。
農地改革で小作農から自作農への転換が行われ、農地は細分化されていきます。

また、自ら開墾して得た農地を、先祖代々守り続けてきた例もあるでしょう。
そして農業は、必要な基盤(農道や用排水路など)が共通していることから、共同体で行ったほうが効率は良く、農村と呼ばれる集落単位で行われてきました。

ところが、小口の農家が集まっても農地は個人所有ですし、代替わり・売買などで所有権が移転していった結果、まるでパッチワークのように農地は分散されていきます。
中には、農家をやめてしまい、荒れ果てた耕作放棄地も存在するようになりました。

この点を解消しないと農業の未来はないとして、農業を再度転換していこうとする試みが、農地バンクの創設にも関係しています。

日本の農業は生産効率が悪い

例えば、離れた2つの農地で作物を栽培するよりも、同じ合計面積を持つ1つの広い農地で栽培するほうが、行ったり来たりをせずに効率よく農業が営めます。
しかし、前述のように個人所有で分散した農地では、土地を守る意識も働いて権利調整が難しく、現在でも分散化は解消できずにいます。

この生産効率の悪さは、農業全体のコスト高に繋がり、規制が緩和されて農作物が大量に輸入されると、大規模で効率よく生産している国よりも競争力が劣ります。
しかも、農家にとってコスト高は収入減でしかなく、農家の所得にも影響します。

つまり、日本の農業はもっと効率化して競争力を高め、農家の所得を上げていかなければならないとするのが政府の考えです。
これまでも同じ考え方はありましたが、政策としてうまくいっていませんでした。

耕作放棄地の増加

農業は国民の食物を生み出す基幹産業で、農業のために優良な農地は欠かせません。
自国での食料調達が困難になるのを防ぐため、国は農地に規制を設けて保護し、個人所有でありながら制限を受けるのが農地です。

平成に入って農家は高齢化し、離農や相続もあって農家がどんどん減る一方で、制限を受ける農地は同様には減らず、次第に耕作放棄地が増えました。
耕作放棄地の存在は、単純に農作物の生産量が落ち込み、食料自給率の低下を招きます。

農家の減少と耕作放棄地の増加は、どちらも農業政策には重要課題で、食料自給率を維持するためにも、早急に対策が必要になってきました。
(農地の現状と耕作放棄地については、別に詳しく説明しているのでご覧ください。)

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農地の面積は年々減り、耕作放棄地も増えています。では耕作放棄地が増えることでどんな問題が起こり、どのような対策がなされているのか?その全容をまとめました。

農地バンクの創設へ

農地バンクは安倍政権が掲げる「攻めの農業」の目玉政策で、分散化された農地を集積し、農業経営を拡大したい担い手に利用させて、農業の効率化=収入増を図るものです。
仕組みは後述しますが、かんたんに言えば農家から小規模な土地を貸してもらい、1つにまとめて経営規模の大きな農家に転貸します。

農地の提供者は農地バンクに貸し、農地の利用者は農地バンクから借りることで、個人間の貸し借りではなくなり安心感が高まります。
その結果、農地の集積化が進み、農業は効率化されていくという狙いです。

これまでも行われてきた農地を集積する政策では、基本的には売買が中心の仕組みになっており、農地バンクのような受け皿はありませんでした。
農地バンクは貸借が中心で、農家をやめようと思っている、または現に農業ができていない農家のうち、土地は手放したくない層でも利用されると考えられています。

農地バンクの目的

農地バンクは、農業の生産性向上を目的としていますが、農地中間管理事業の推進に関する法律第1条から、具体的には次の3つの目的で創設されたとわかります。

  • 農地を集積化してまとめる
  • 農業経営の規模を拡大する
  • 新たな農業経営者の参入を促進する

農地の集積化

分散化された農地を集め、効率よく栽培が可能な一団の農地を形成します。
要するに農地の区画整理を行うのですが、耕作放棄地(遊休農地)を取り込むことで、無駄になっている農地を減らしながら、使える農地を整理していきます。

農業経営の規模拡大

農地の全体の面積は変わらなくても、農地の集積化によって1区画の農地は広くなるため、経営規模を拡大したい農家には、効率よく農業ができる環境が整います。
その結果、生産性は高まって、経営も安定していく流れに向かっていきます。

新規参入の促進

若年層・青年層の農家離れを止めることも重要な課題ですが、いくら保護をしても、人口減少が進む日本においては、農家が減る傾向を止められません。
農業の経営規模が拡大すると、コストバランスから企業参入が可能になり、企業に若年層・青年層が雇用されて農業に関わることにもなります。

農地バンクの仕組み

農地バンクを提供している農地中間管理機構は、農地を持て余している農家(出し手)から、賃料を払って農地を借り上げて集めます。
集められた複数の農地は、ある程度の規模にまとめられ、大規模に農業をしたい農家(受け手)に貸し出されるのが基本的な仕組みです。

したがって、出し手(貸し手)は機構から賃料を受け取り、受け手(借り手)は機構に賃料を支払う形態で成り立っていくのですから、出し手と受け手の賃料が同じなら、機構の運営費だけで回りそうなものですが、そう上手くはいきません。

受け手がいなければ借りてもらえない

農地バンクは、無制限に農地を集めて賃料を支払い、受け手が現れるまで維持管理してくれるような、農地所有者(出し手)に都合の良い制度にはなっていません。
機構が借り受けるのは、受け手が希望する地域に含まれる農地だけです。

出し手としては、希望すれば機構のリストには載りますが、その状態は受け手待ちであり、賃料を得られる状況ではありません。
たとえ受け手が現れて、機構に借り受けてもらえたとしても、受け手と賃料等の条件が合わなければ貸し出されず、1年や2年の間、維持管理を機構がしてくれるだけです。

最終的には受け手が見つからない農地は、所有者に返されます。
機構の存在は、出し手と受け手を繋ぐ役割にはなっても、使わない農地の所得保障をするような制度ではないので、勘違いしないようにしましょう。

借り上げ期間は10年以上

原則として、機構が農地を借り受ける期間は10年以上とされており、出し手としては、10年を長いとみるか短いとみるか判断は分かれます。
将来もまったく使う予定がないか、高齢なら相続まで考えておかなくてはなりません。

形式的には機構に貸しますが、実際には受け手が使うので、途中で返してくれと言い出しても応じてもらえず、農地バンクの利用が進まない理由の1つと考えられます。
また、機構以外に売買や貸借の可能性が考えられるなら、機構に貸すことで自由がなくなるのを嫌って、貸し出しに消極的な所有者もいるはずです。

賃料は地域によって異なる

農地バンクに関係なく、農地の賃料は土壌や気候、地形などで変わって当たり前ですから、農地バンクの賃料も地域によって水準が異なります。
基本的には、同様な農地の賃料に準じて決められますが、受け手は安く借りたいので、賃料は固定されているものではありません。

賃料を固定化して、成約するはずの組み合わせが成約しなくなるのは、農地バンクの趣旨から外れますし、目的が農地の集積化と利用率の向上である以上、出し手の賃料を確保するよりも、受け手の意向がどうしても強くなりがちです。

その結果、地域の水準より高く機構が借り受けることは考えられず、逆に受け手の意向で安くなることは十分に考えられ、極論を言えばタダ同然もあり得ます。
建前上は地域水準を維持するべきですが、税金で機能している機構は、目標達成率が低いと批判が高まり、受け手寄りで成約して実績を作ろうとするでしょう。

このように、機構に貸せば安定収入が得られるような触れ込みで始まっている農地バンクでも、賃料は受け手次第で変わるということです。
また、出し手が意地を張って賃料を堅持しても、受け手がいなければ絵にかいた餅です。

農地バンクのメリット

農地バンクには多くのメリットがあるとされており、確かにメリットはあるのですが、デメリットと表裏一体であるメリットもあって、農地の所有者としては、将来設計も見据えた上で良く検討しなければなりません。

不要な農地を活用できる

農地バンクに貸すとすれば、不要になって持て余している農地なはずで、そう考えると一番のメリットは、農地を活用できることではないでしょうか。
現実として、農地を管理できずに困っている農地の所有者は多いようです。

例えば、農地をタダで貸して耕作してもらい、水代(水利費・用水費)を負担してでも、農地が荒れるのを防いでいる農家もいるのが現実です。
その代わりに作物の一部をもらうどころか、貸す側がお中元やお歳暮を贈るくらいで、そのくらい農地の管理は手間が掛かって大変です。

また、極端に荒れていなければ、耕作放棄地でも機構が借りる対象になり、毎年農業委員会が行う農地利用状況調査での再生不能判定(赤判定)を可否の基準とします。
したがって、赤判定を受けていない農地なら候補になるということです。

受け手を機構が探してくれる

農家に知り合いが多くいて、誰かが小作してくれる状況なら、他の農家に貸すことができるので困っていないはずです。
しかし、借り手がいても小さな農地を借りてくれるのは個人ですし、自分から借りてくれないかと頼むのも気が引けるのではないでしょうか。

農地バンクでは、周辺の同じような農地と統合して、大きな区画で法人への貸し出しも含め受け手を探してくれます(実際は公募です)。
これは、個人単位ではなかなか実現できない、大きなメリットになります。

税金の上昇を防ぐことができる

耕作放棄地は、増税の方向で決まったことは知っているでしょうか?
耕作放棄地の解消をしたい政府は、増税してでも対策しようとしています。

もし増税対象から外れる農地でも、固定資産税は土地の現況に基づく原則から、耕作されていない農地は税金が高くなっても文句は言えません。
農地バンクに貸すことで、こうした増税関連の動向を気にしないで済みます。

賃料と協力金が得られる

機構に農地を貸して、機構が受け手に農地を貸すと、機構から賃料を得られます。
それだけではなく、出し手には協力金という名目で農地の広さに応じた金額が交付されるため、賃料や協力金は確実なメリットです。

金銭的なメリットから、農地バンクに貸す人が増えることを政府は狙っているのですが、これはどのような政策でも、促進のために税金から補助金などが交付されるのと同じで、農地バンクだからおかしいという話ではありません。

貸付期間が終われば返ってくる

原則として10年以上という制限があるにしても、個人間の貸借と異なり、機構に貸す場合には期間満了で返ってきます。
農地を貸したがらない多くの人は、返ってこないことを心配しているため、農地バンクではその面での不安はないでしょう。

逆に返してもらっても困るというケースでは、受け手が機構と再契約を望めば、必然的に出し手と機構も再契約となります。
受け手が再契約を望まないと、出し手に農地は返還され、受け手待ちの状態に戻ります。

農地バンクのデメリット

現状において、農地バンクは決して成功しているとは言えません。
始まって間もない制度で周知不足があるとはいえ、出し手が貸し渋っていることも、大きな要因になっていることは確かです。

機構に農地が集まらないのは、農家や農地を持っている非農家が、メリットよりもデメリットを感じているからでしょう。
そして、デメリットには農家が持つ心理的な要因も大きいと考えられています。

誰が借りるかわからない

個人間の貸し借りであれば、人を選んで貸すことはできますが、農地バンクに貸した場合は、受け手が公募であることから、誰が借りるかわかりません。
どのように使われるかもわからないのは、出し手にとって大きな不安でしょう。

「土づくり」という言葉が端的に表すように、土は作っていくもので、農地は農家が愛情を持って育てていく性質の土地です。
だからこそ不経済でも貸したがらない農家が多く、農地の貸借は相手との関係性が重要視され、作物を栽培してくれれば誰にでも貸す農家は稀です。

また、非農家が相続した農地や、耕作が放棄された農地であっても、他人が自分の農地へ入ってくることに抵抗を覚える人は多いようです。
こうした心情は、経済的なことにしか頭が働かない人には理解できない論理で、農地バンクの利用が進まないのも、出し手の不安を解消できていない証拠です。

借りてもらえるとは限らない

たとえ適切に管理されて、機構が借り受ける水準を満たした農地でも、小規模な農家1戸の農地では集積化に貢献できず、広い一団の農地を形成できません。
単独で広大な農地を持っていれば別ですが、周辺の農家も同様に機構に貸す意思がないと、物理的に農地がまとめられないからです。

要するに、周辺の中で自分だけ機構に貸したいと思っていても、なかなか受け手は現れず、いつまでも機構は借りてくれないということです。
この状況で、機構が借り受けるとすれば、隣家が農地を拡大したくて、機構に受け手として応募しているケースですが、それならば隣家と直接交渉すれば良いでしょう。

10年以上も返ってこない

農地バンクの借入期間は原則として10年以上で、協力金の交付も機構が10年以上借り受けることを条件としています。
10年前と今を比べて、まったく同じ景色が広がっている地域は少なく、それは10年後にも違った景色が広がる可能性を意味しています。

もしかしたら、農地バンクに貸すことで大きな別のチャンスを逃すかもしれず、使わない農地だからこそ、有効に活用する方法が他にないか考えてみるべきでしょう。
10年以上返ってこない契約は、農地活用の柔軟性を奪うデメリットです。

受け手市場になりやすい

農地バンクの目指す運用は、借り手がいない農地の所有者にインセンティブ(賃料や協力金)を与え、農業を拡大したい・参入したい借り手に引き渡すことです。
つまり、出し手も受け手も共にメリットを得られる構造なら、税金を投入してでも機構を設置する意味は大きく、日本の農業構造は変わるのかもしれません。

出し手となる農地の所有者にしてみれば、使わない農地から収入を得られるので、投機的な見込みで農地バンクに貸そうと思った人も多いはずです。
ところが、機構が出し手に支払う賃料は、受け手との協議で決められることになっており、地域水準の賃料が保証されるものではありません。

タダでも借りて欲しい出し手がいる一方で、受け手は特定の地域に縛られないため、少しでも条件の良い地域を探すのは当然で、どうしても賃料は受け手主導の安い方向で決められがちな構造です(機構の運営方針にも影響されます)。

ここで、出し手と受け手の賃料が合わないときに、機構が差額負担(機構から出し手へ差額支払い)をしてでも、農地を集められないのかと考えるかもしれません。
ただ、その仕組みを作ると差額は税金が使われるので、税金を出し手へ流す利益供与になってしまい、社会通念上許されないのです。

利用の流れ

農地中間管理機構の設置は都道府県単位でも、その業務は市町村に委託されています。
地域の事情を熟知し、柔軟に調整できる市町村や農業委員会の役割は大きく、都道府県が全域の業務を担当するのは、実務上で難しいからです。

したがって、農地の所有者が農地バンクを利用したいとき、農地中間管理機構に直接問い合わせしなくても、市町村の農政担当部署に問い合わせできます。
また、地域によっては農業委員会やJAが窓口になっている可能性もあります。

1.貸付希望の申出

農地バンクの窓口になっている、市町村の担当部署、農業委員会等に農地を貸したい旨を伝えることが、農地バンク利用の第一歩です。
貸付希望申出書のような用紙があるはずなので、記入して提出します。

この時点では、貸付希望者リストに掲載されるだけで、農地を借りてもらえるわけではないので注意しましょう。

2.貸付希望農地の確認

貸付希望を申し出ると、機構が借り受けられる農地であるかどうか、機構や市町村または農業委員会が現況を確認します。
あまりにも荒廃した耕作放棄地は除外され、希望期間や希望賃料が確認されます。

この時点でも、機構が借り受けるわけではなく、受け手とのマッチングのために、期間や賃料の希望を確認するだけです。

3.受け手とのマッチング

市町村は毎年特定の時期(6月頃が多い)に、受け手の公募をしています。
受け手から申込みがあれば、受け手の希望する農地確保が可能かどうか、希望期間や希望賃料を出し手と同じように確認します。

そして、出し手の希望と合っていれば話は進みますが、条件が合わなければ、出し手と受け手の間に市町村や農業委員会が入って、協議の上で交渉をまとめます。

4.機構による借り受け

受け手が農地を借りると見込まれる場合、機構が出し手の農地を10年以上で借り受け、ここでようやく機構に権利取得が発生します(中間管理権といいます)。
機構は、必要があれば受け手に貸し付ける前に、耕作放棄地の再生や基盤整備をします。

中間管理権が設定された農地は、機構から受け手に貸し出され、受け手は機構に賃料を支払い、出し手には機構から賃料が支払われます。

農地バンクの実績

農地バンクによって、受け手に転貸・売渡された農地は、平成26年度の実績で3万1千haとのことでした(農水省公表値)。
農地バンクが登場する前の制度と比較して、貸借実績で約10倍、売買を含めた実績でも約3倍に拡大しており、農水省は一定の成果があったとしています。

また、農地が担い手(大規模経営者、農業法人、集落営農など)に集積している割合を示す、集積率という指標を用いると、農地バンクを利用していない集積を含めて、平成25年度の48.7%から50.3%へ上昇しました。

確かに数字だけ見ると、集積化に農地バンクが寄与した事実はありますが、問題とされているのは、集積目標の14万9千haに対し実績が3万1千haしかないことです。
目標達成率が2割強に過ぎないので、農地バンクは批判の的になっています。

平成26年度実績の詳細

平成26年度の実績3万1千haの内訳は、転貸面積が約2万4千ha、売渡面積が約7千haで、それぞれ借入面積、買入面積と比べると次のようになります。

(単位:ha) 借入・買入面積 転貸・売渡面積 成約率
借入して転貸 28,882 23,896 82.7%
買入して売渡 7,378 7,114 96.4%

いずれも高い成約率で、農地バンクは成功しているように思ってしまいます。
ところが、農地バンクの仕組みで説明したように、農地中間管理機構が出し手から借りるのは、受け手に貸せる見込みがあるときだけです。

買入と売渡でも同じことで、上記の数字は「ほぼ成約が決まっている」案件を取り上げているので、成約率が高くて当然です。
では、実際に受け手が借りたいと希望している農地は、どのくらいでしょうか?

受け手の需要は機構借入面積の8倍

農地バンクに対する借り受け希望は、平成26年9月末の時点で23万ha(経営体数は3万)もあって、機構が集めた借入面積2万9千haの8倍です。
そのうち2万4千haしか機構は貸すことができておらず、借り受け希望全体に対して、機構がマッチングできた農地は僅か10%程度です。

借り受け希望があっても、その地域の農地が集積化されていなければ貸せないのは仕方がないとしても、たった10%のマッチング率とは驚きです。
政府は10年後までに集積率を8割に掲げていますが、果たしてどうなるやら…

イオンが農地バンクを利用して米作り

農地バンクを利用した例では、イオングループのイオンアグリ創造(株)が、埼玉県で米作りを始めたことが話題になっています。
同社は、以前から他県でも農業に参入していますが、18haの水田を農地バンク経由で取得し、同社の農地面積は300haを超えています。

大手企業(子会社ですが企業としてはイオン)への農業の参入は、これまでの農業が小規模農家を中心としてきただけに賛否両論あります。
そして重要なのは、同社の新卒採用に多数の希望者が集まっていることです。

これからの農業を支えていくためには、農業人口が世代交代を進めなくてはならず、その意味で農業参入した大手企業に人が集まるのは好材料です。
ただし、農業をする企業と農家を同一視できないのは言うまでもありません。

莫大な予算が積み上げられている

農地バンクは成長戦略の1つとして銘打っているだけあり、政府の力の入れようは、毎年度計上されている予算に良く表れています。
平成25年度の補正予算153億円、平成26年度の当初予算100億円、平成26年度の補正予算200億円、平成27年度の当初予算90億円と続きます。

この数字は、出し手に協力金として支払われる予算に過ぎず、その他に機構の事業費は別枠で予算計上されています。
しかも、これだけの莫大な予算を計上しながら、実はほとんど使われていません。

機構が受け手に貸せていないのですから、協力金が交付されず予算が使われないのも当たり前で、平成26年度までの合計予算453億円で使われたのは80億円です。
にもかかわらず、平成27年度の当初予算として90億円が追加されました。

これは、圧倒的な受け手の需要にまったく応えられていない機構が、農地の集積化を加速させて供給を進め、出し手に協力金を交付すれば理屈上は消費されます。
しかし予算が数百億余っている状況から、さらに積み上げていく計上の仕方に、疑念を感じてしまうのは気のせいでしょうか。

これからの課題

農地バンクの目標達成率の低さは、個々の農地所有者が、遊休農地や耕作放棄地を手放さず、機構が農地を集積化できていないことが理由です。
逆に捉えると、農地の出し渋りが起こる原因を、農地バンクはケアできていません。

よく言われる原因は3つあり、1.固定資産税の低さ、2.転用売却への期待、3.農地を他人に使わせる抵抗感だとされます。

1については、農地所有者は反対するでしょうが、既に増税が検討されているので、解消される方向で動き出しています。
2については、バブル期のように農地を含めて土地が高騰する状況や、建設ラッシュで宅地が広がっていく状況を、今でも夢見ている農地所有者はごく一部だと考えられます。

問題は3ですが、農地が「ヨソ者」に使われる不安感はお金の問題ではないので、賃料や協力金で解決できるものではなく、機構が受け手の営農について、地権者や地域の要望を受け入れるように、調整する仕組みを用意すれば前進するのかもしれません。

今の動きは、所有者にお金を出せば農地は集まる、所有者に増税すれば農地は集まるという安易な考えに基づくので、アメとムチのどちらにも反応しない、土地を守っていく意思の農家には通じないでしょう。

まとめ

これまでの農業政策は、得票という政治的意思はあったにせよ、食料供給を担いながら、所得が総じて低く安定しない農家の保護に終始してきました。
安倍政権の農地バンクは、単純に考えるなら「農業の企業化」を狙っています。

この政策は、戦後から続いた小規模自作農から、大きく舵を切るものです。
農地バンクへの税金投入額を考えると、何としてでも成功してもらわなければ、納税している国民としてたまったものではありません。

既に失敗との声が聞こえる農地バンクですが、耕作放棄地を減らして有効活用する方向は、誰もが賛成するところで、その手法の是非が問われています。
農業は大きな転換期を迎えており、いつの時代もそうであるように、結果に対する評価は将来されることになるのでしょう。

農地の一括査定について
農地の一括査定について

農地は食料自給率低下を防ぐため、勝手に他の用途で使ったり、売却、貸地が許されていません。
しかし農家の子が農家であることは少なく、相続で手にした田畑を持て余してしまうケースが増え、耕作放棄地として問題となっています。

実はそんな土地も、鉄道の駅から比較的近い立地であれば、住居用に転用し、売却できる場合があります。
一括査定サービスでは、農地に対応したサイトもあるので、利用してみてはいかがでしょうか?

アグリメディア
市民農園としての活用

宅地にできない農地は活用の幅が極端に狭く、固定資産税が安いからと割り切れるならまだしも、周辺への影響もあって、管理しながら見えない出口に悩む人もいます。
また、農地として貸すにも相手が限られたり、相手が見えない不安、もしくは賃料の安さがためらう理由になることもあるでしょう。

それに対して、家庭菜園や週末農業のニーズは増えており、サポート付き、6㎡ほどの市民農園を提供する、「シェア畑」というサービスがあります。
運営するアグリメディアが農地を預かり、市民農園としての運営を一括して任せることで、一定の賃料も得られることから、農地活用の可能性を広げるものとして注目しています。

都市部を中心に対象地域を増やしているので、活用方法に困ったときは、相談してみてはいかがでしょうか。

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