行政代執行とは?空き家問題への対策やその費用について

行政代執行とは

「行政代執行」という言葉を、ニュースで聞いたことはないでしょうか?
最近では、大阪府で駅地下の老舗串カツ店や、福岡県の東九州自動車道建設でミカン農家が行政代執行の対象になって話題となりました。

行政代執行は、行政から義務(例えば撤去など)を課せられている対象に、公権力でその義務を強制的に履行させるものです。
義務とは、前述の串カツ店なら立ち退き、ミカン農家なら明け渡しになります。

さて、ニュースは他人事と思っていたら大間違いです。
なぜなら、平成27年5月に完全施行された空き家対策特別措置法でも、特定の条件に該当すると、行政代執行に基づく強制対処の対象になってしまうからです。

ここでは、空き家と行政代執行の関係を解説していきますが、予備知識として空き家対策特別措置法を知っておくほうがわかりやすいでしょう。
空き家対策特別措置法については、こちらで解説しているので確認してみてください。

空き家対策特別措置法(空き家法)を分かりやすく解説
平成27年5月26日、空き家対策特別措置法が完全施行されました。これは誰が対象で、どういった効果や固定資産税などへの影響があるのか?噛み砕いて解説してみます。

串カツ店やミカン農家は何が問題だった?

大阪の串カツ店は、地下道での道路占用許可が打ち切られ、立ち退きを請求されていたのに、従わないで営業を続けていました。
東九州自動車道のミカン農家は、農園が高速道路の予定地を寸断しており、明け渡しを請求されていたのに従わないでいました。

最終的に串カツ店は自主退去したのに対し、ミカン農家は最後まで戦い、行政代執行によって農園は強制収用されることになります。
どちらも同じように思えますが、両者には明確な違いがあると気付くでしょうか?

串カツ店の場合、行政に許可を得て営業するものなので、行政が許可をしなければ、立ち退きを求められても仕方がないでしょう。
ところが、ミカン農家の場合は、以前から保有していた農園に、後から高速道路ができることになり、要するに「邪魔だ」と言われたわけです。

重要なのは公益性

串カツ店の地下道と、ミカン農家の高速道路に共通しているのは、どちらも「公益性」を持っている点です。
行政代執行の是非はともかく、公益性が名分となり代執行されるのは間違いありません。

空き家対策特別措置法によれば、串カツ店やミカン農家と同じようなことが、空き家でも起こり得る状況を示唆しており、空き家のオーナーには非常に重要です。
では、行政には代執行できるほどの権力があるのでしょうか?

行政代執行は行政による強制執行

いくら行政が公的機関だからといって、空き家を自由にできるはずがありません。
空き家は民間人である所有者の財産で、行政代執行による強制執行を無条件に許すと、所有者の財産権を侵害してしまいます。

「行政」が、義務を履行しない義務者の「代」わりに、「執行」するのが行政代執行ですから、空き家の所有者が負う義務の存在と、代執行の法的根拠を必要とします。

空き家の所有者が負う義務

空き家対策特別措置法では、放置することで安全上・衛生上・景観上等に問題がある空き家に対し、改善が必要な「特定空家等」とみなします。
そして、特定空家等の所有者には、改善のために必要な措置を命じることができます。

実際は、改善命令の前に、助言・指導、勧告といった前段階が用意されており、そのいずれにも従わないときに限り、命令が発せられるようになっています。
つまり、改善命令が空き家の所有者が負う義務となり、そのうち「行政代執行しますよ」と言われているのも同じなのです。

行政代執行の法的根拠と要件

行政代執行を定めているのは行政代執行法で、空き家対策特別措置法では行政代執行法の定めに従って、代執行ができることを規定しているに過ぎません。
行政代執行法では、代執行に次の3つの要件を定めています。

  • 義務者が義務を履行しない
  • 他の手段で義務の履行を確保することが困難
  • 不履行を放置することが著しく公益に反する

ここで問題となるのは、「著しく公益に反する」という要件です。
空き家対策特別措置法の施行前は、この要件が障害になり代執行できないケースもありましたが、特定空家等は公益に反することを根拠に、代執行できるようになりました。

空き家の改善は、空き家に施す以外に他の手段がなく、その結果、空き家への行政代執行の要件は次の2つになります。

  • 空き家が特定空家等とみなされた(公益に反する)
  • 行政からの改善命令に従わない(義務の不履行)

行政代執行の費用は所有者負担

行政代執行は、その行為(義務者がすべき行為)を行政が自ら行うか、第三者にさせることも可能で、空き家の修繕・解体等を行政が自ら行うのはさすがに無理です。
したがって、行政から委託された業者が、修繕・解体等を行います。

このとき、委託された業者に支払うべき費用は行政が支払いますが、空き家の所有者から徴収することができ、要するに所有者負担です。
勝手にされて、費用請求もされるのですから、一切支払わないと思うでしょうか。
そうもいかないのが行政代執行で、しっかり費用は回収される仕組みになっています。

行政代執行の費用は国税滞納と同じ扱い

行政代執行法第6条第1項には、「代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。」と定められています。
行政代執行にかかる費用は、当然に税金ではありませんが、行政は国税を滞納したときと同じ方法で徴収することが許されています。

税金を滞納すると、通常は何度か督促状が届き、次いで差し押さえの予告が届きます。
それでも応じなければ、職権により財産調査がされ、財産が発覚すると、最後は財産を差し押さえられて強制的に徴収されます。

行政代執行がされてしまえば、抵抗もできず費用も徴収されるので、空き家では最初から自分が所有者だと名乗り出ないケースも考えられます。
古い空き家では、所有者不明の場合も十分に想定されるでしょう。

所有者が不明の場合でも行政代執行は可能

空き家対策特別措置法では、所有者が不明の場合でも代執行できる規定があります。
ただし、過失がなくて確知(知ること)ができないことを条件としているため、所有者が不明なときは確認もせず行うのではなく、所有者の調査はされます。

不動産は登記されており、行政は固定資産課税台帳で確認するか、法務局の登記情報を確認すれば、容易に所有者は特定できるように思えます。
ところが、空き家であるからにはそこに住んでいないので、住民票の移動がない限り、現在の所有者がどこに住んでいるか知ることができません。

行政が所有者を特定できないとき、最後は行政負担になる可能性が高くなります。
それでも、特定空家等を放置するのは公益に反するため、代執行してでも修繕・解体等をしなければならず、地域によっては行政負担が問題になるでしょう。

所有者が亡くなっていたら?

登記等で所有者が特定できたとして、既に亡くなっていたらどうなるでしょうか?
相続時の登記は義務ではないので、所有者が亡くなっても名義変更がされていない空き家は、相当数あると考えられます。

この場合、亡くなった所有者の戸籍を調べると、相続人が判明することになります。
しかし、相続人が複数存在するときは、誰が相続したのか戸籍からはわからず、相続人から事情を聴取しなければ、相続人が特定できません。

相続人の所在が特定できるならまだしも、相続人もどこに住んでいるかわからない場合、事実上はお手上げになって行政負担になる可能性大です。

所有者不在で行政代執行されたケース

平成27年3月に、神奈川県横須賀市で、空き家の除去命令を出されていた空き家が、行政代執行により撤去されました。
空き家の所有者は亡くなっており、相続人が全員相続放棄したため踏み切ったものです。

ただし、このケースは空き家対策特別措置法が完全施行される前で、建築基準法に基づいて代執行されています。
全国的に空き家対策を迫られているので、今後は同様のケースでも、空き家対策特別措置法を根拠として代執行がされると考えられます。

空き家オーナーが気を付けること

行政代執行に助言・指導、勧告の前段階があるのは、既に説明しました。
特定空家等とみなされ、助言・指導をされた時点で、いつかは行政代執行の対象になるので、何らかの対処を必要とします。

一番良いのは、うまく空き家を活用することですが、有効活用が難しければ、解体するか売却するしかないでしょう。
考えられる対処方法はいくつかありますが、ひとまず解体の記事を紹介しておきます。

家の解体費用の相場と見積もりの事例(木造・軽量鉄骨他)
危険な空き家は固定資産税の軽減対象から外される動きが出ています。今後は空き家が解体されるケースも増えることから、解体費用の相場と構造別の事例をまとめました。

また、すぐに対処できない事情があるなら、行政への相談も大切です。
所有者に自覚があり、対処しようとしている姿勢があれば、行政も直ちに強硬な手段を講じることはありません。

まとめ

空き家の所有者がいくら頑張っても、行政が代執行すると決めたら実行されます。
方法論としては、空き家対策特別措置法に基づく改善命令が出た時点で、取消訴訟を起こすことも視野に入ります。

しかしながら、代執行の名分は公益性ですし、代執行で回復し難いほどの著しい損害を所有者が受けることも考えにくく、取消訴訟は認められないでしょう。
ましてや、弁護士に依頼して訴訟で戦うお金があれば、空き家の改善もできるはずです。

自分の空き家が特定空家等になってしまったら、速やかに改善するしかなく、結局は空き家を放置しないで、対策を考えていくのが最善の方法と言えます。

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