遊休農地を活用する3つの方法と転用許可の基準

人口減少が止まらない日本においては、本来作物を収穫する目的の農地も、高齢化や採算性の厳しさから、農地を放棄してしまうケースが目立つようになりました。
特に高齢化は、日本全体で歯止めがかからず、様々な分野で将来が不安視されています。

そのような中、農地においても相続によって代が替わり、最初から農家ではない相続人が、農地を活用できずに困っています。
相続前にでも後継ぎがおらず、耕作放棄地となるケースもあるでしょう。
ところが、耕作目的以外の用途が認められない農地も多く、遊休農地や耕作放棄地の活用は、田舎の他の土地よりも難しい面があります。

制限はありますが、活用方法がまったくないわけでもないので、自分の保有する農地がどのように活用できるか、諦めずに可能性だけでも知っておきましょう。

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農地を持てるのは農家に限定される

どのような農地でも、農業に使われるべき土地だからこそ「農地」と呼ばれます。
この当たり前のことが農地活用に大きく影響を与え、農業に使えば農地なのではなく、農地は農業に使わなければならない点がとても重要です。

つまり、全国にいる土地が欲しい人の中で、農地を手に入れられるのは農家か農業を始める人に限定され、農地の取得には自治体の農業委員会の審査もあります。
例外として相続に限っては許可を必要としないのですが、相続は新規の取得ではなく承継ですし、相続権が許可の対象になるはずもないので当然だと言えるでしょう。

こうした制限はあっても、農地を農地以外の目的で使用する「転用」と呼ぶ方法があり、転用した農地は既に農地ではないので、誰であっても取得や使用が可能です。
「元農地」であって「現農地」でなければ、農地としての制限はありません。

農地は転用を前提とした売買も認められていることから、耕作放棄地や遊休農地の活用は次のように3つの方法に分かれます。

  1. 農地を農地のままで活用する
  2. 農地を転用してから農地以外で活用する
  3. 農地を転用前提で売却・賃貸する

いずれの方法でも、農業委員会の許可を受けなければ法律違反だけではなく、許可を受けずに行われた行為(売買や賃貸借など)は、無効とされるので注意しましょう。

また、農地には農地区分という行政が決めた区分があり、農地の活用では、最初に自分の農地がどの農地区分に該当する確認することから始まります。
農地区分によって、農地としての利用しか認められない農地と、農地以外に転用できる農地に分かれますから、自ずと活用方法も異なっていきます。

農地区分と農地転用許可の基準

農地転用とは、単に耕作以外での使用そのものを指しているのではありません。
農地は耕作以外の自由な使用を法律で禁じられている土地で、転用には農地を管轄する農業委員会による許可を必要とします。

転用許可は農地区分と密接な関係を持ち、転用したいからといって、すべての農地が転用を認められるわけではなく、優良な耕作地としての農地は保護されます。

農地区分説明転用の許可/不許可
農用地区域内農地市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地原則不許可です。
甲種農地第1種農地の条件を満たす農地であって、市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等特に良好な営農条件を備えている農地原則不許可です。
第1種農地10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地原則不許可です。
第2種農地鉄道の駅が500m以内にある等市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地周辺の土地に代えることができない場合は許可されます。
第3種農地鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地原則許可されます。

条件付きの許可になる第2種農地、原則許可となる第3種農地以外は原則不許可になっており、自己都合での転用許可は極めて難しい状況で、農地での活用を前提とします。
農地区分を確認する方法としては、管轄の農業委員会への確認が最も確実です。

なお、農地区分で許可対象ならすべて許可とはならず、転用目的が確実に実現できることを転用許可の申請段階で証明しなくてはなりません。
したがって、転用自体を目的とする申請は、許可されないどころか、申請を受け付けてすらもらえないので知っておきましょう。

方法1:農地を農地のままで活用する

農地を転用せずに(転用できない農地を含む)利用としたら、自分以外の誰かに耕作をしてもらわなくてはならず、その方法は限られてきます。

他の農家に売却する

地域の事情はあるにしても、農地を拡大したい農家は限られており、農業に参入しようとする人も決して多くはないため、需要が少ないかもしれません。
売却先のアテがなければ、近所の農家を当たってみるのも1つの方法です。

誰が買主であっても、農家(もしくは農業を始める人)に農地を売却するときは、農業委員会から売買の許可を受ける必要があります。
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他の農家に貸す

売買と同じように、他の農家へ貸す場合でも、農業委員会の許可が必要です。
賃料が発生する賃貸借でも、無償で行う使用貸借でも許可が必要なのは変わりません。

民法上の賃貸借は20年間が上限ですが、農地では50年間まで 賃貸借できます。
また、賃貸借契約を解除する場合でも、農業委員会の許可を要します。

市民農園として活用

都市部に比較的近ければ、市民農園として貸し出す方法も考えられます。
市民農園の形態には3つあり、市民農園整備促進法による形態、特定農地貸付法による形態、農園利用方式と呼ばれる法手続きが不要な形態があります。

市民農園の制度は難しいですが、自治体が補助事業を行っている場合もあるため、他に方法がないなら積極的に考えてみてもよい方法です。
また、市民農園は農地だけ提供して済むものではなく、農業指導等のサポートを含むのが利用者の要望としても一般的なので、自らできなければ近隣の農家に頼むか、第三者(自治体や企業、NPO法人など)に貸し出す方法になるでしょう。

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農用地利用集積計画と農地集積バンクの利用

農地法による売買や貸借は、農業委員会の許可を必要としますが、他にも売買や賃貸の方法として、農用地利用集積計画と農地集積バンクがあります。
いずれも分断または小規模で点在した農地をまとめて、経営規模を拡大したい農家に提供していく目的で整備された制度です。

農地集積バンクは都道府県単位ですが、業務を市町村に委託しており、主に農用地利用集積計画を使って権利移動するので、結局はどちらも市町村が窓口です。
市町村の農政担当部署に、遊休農地がある旨を伝えて相談してみましょう。

特に貸借では、農地法による当事者間の直接契約に比べ、市町村が介在する点と、期間満了で農地が返還される(法定更新がない)点で優れています。

農地集積バンクについては個別に解説した記事があるので参考にしてください。

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方法2:農地を転用してから農地以外で活用する

農地が転用できる農地区分にある場合、次のような自ら使用するための活用方法を決めてから、農業委員会へ農地転用の申請をします。

  • 駐車場
  • 資材置き場
  • 太陽光発電

この他にも活用方法は考えられますが、どの方法でも共通しているのは、農地転用には目的が必要で、転用後は目的を達成しなくてはならない点です。
先に転用だけを申請することは許されないので、目的が具体化してから申請します。

上記は事業ですから、事業が成功するかどうかはともかく、事業計画とその資金の調達において実現性がないと、農地転用は認められません。
自宅を建てるとしても、建築資金が調達可能で、建築許可が受けられる前提を必要とするほど、農地転用には厳しい制限があるのです。

もし自分では活用するつもりがなく、第三者に売却したり貸したりする目的であれば、転用を前提とした方法3になります。
もっとも、一旦は比較的費用が少ない駐車場や資材置き場に転用してしまえば、その後の活用方法は自由なので、売却や賃貸することはできます。

その場合でも、駐車場が必要とされているのか、資材置き場として使用する人はいるのかなど、実現性を問われるのは間違いありません。

土地の活用方法については、こちらで詳しく取り上げています。

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方法3:農地を転用前提で売却・貸借する

第三者が転用後の農地を使用する目的で、売却や賃貸借する方法です。
この場合でも農地転用は必要ですが、自ら使用する場合と違い、売買契約や賃貸借契約を伴いますので、転用を条件とした契約を締結します。

転用後の利用は買主や借主が目的を持ってすることで、売主や貸主としての計画は必要なく、転用許可申請は二者(売主と買主、貸主と借主)で行います。
売却して所有権が移転すれば、その後は考える必要もないですが、賃貸では借主が地代に苦労するようでは困るため、借主やその事業についても知っておくべきです。

方法2の駐車場、資材置き場、太陽光発電に加え、借主が行う事業としては次のようなものも考えられます。

  • 賃貸住宅(一般向け・高齢者向け)
  • 店舗
  • 工場
  • 倉庫

これらはすべて建物がある事業で、個人が行うには多額の資金を必要とします。
そこで、土地を賃貸して借主の事業から地代を受け取るのですが、建物が建つと借地権が発生して、容易に返還してもらえない点は注意しましょう。

最も存続期間が短い事業用定期借地権(居住以外)ですら、10年以上50年未満になっており、その他の借地権では30年以上(一般定期借地権は50年以上)の契約になります。
ですから、転用を前提とした賃貸借では、賃貸借契約が継続したまま相続に至るケースもあって、将来についても考えておかなくてはなりません。

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遊休農地と固定資産税

よくある勘違いとして、地目が農地であれば税金が安いからと、農地の活用を考えず放置する例がみられます。
ところが、固定資産税の課税は、登記上の地目ではなく現況(現在その土地が使われている状況)を調査して課税されます。

そのため、使っていない農地が、永遠に農地で課税とはならず、現況調査で雑種地として扱われてしまえば、はるかに高い宅地並みの税金になります。
それだけではなく、遊休農地には増税措置を講じることが決まっています。

遊休農地は平成29年度から増税

農地中間管理機構(農地集積バンク)を利用した農地の貸借は、一定の成果を上げてはいますが、認知度はそれほど高くありません。
そこで、農地集積バンクに農地を貸し出した場合の固定資産税を減らし、遊休農地を放置した場合に固定資産税を増やす税制上の措置が平成29年度から始まりました。

農地バンクではなく、農地「集積」バンクと名が付いているのは、断片化した農地を集め、ひとまとめにして耕作の担い手に貸し出そうとする目的があるからです。
農業は、まとまった農地で大規模に行う方が効率的なのは間違いなく、小規模で多数の遊休農地によって農地が分断されると、広域的には非効率でしょう。

固定資産税の増税が決まったのは、耕作を放棄するとしても、その遊休農地を有効活用させるために、農地集積バンクの利用を加速する目的があります。
政策目標では、全農地の8割が大規模に農業を行う農家で耕作されるとしていますが、5割強までしか達成できておらず、その理由を遊休農地としているわけです。

このような動向から、遊休農地を放棄して保有し続けることは、もはや税制面でもデメリットが目立つようになり、所有者は対策を急がれるでしょう。
ただし、増税対象となるのは、農地集積バンクへ貸し出すことができる農業振興地域に存在する遊休農地に限られます。

まとめ

現在農家ではない人または農業をやめてしまった人が、耕作放棄地や遊休農地を持っているなら、何らかの活用を考えたいところです。
国策として農地の活用に動き出している今は、絶好のチャンスかもしれません。

これまでは、転用できない農地の利用価値が低く、処分に困る人が多かったのですが、農地集積バンクでは逆に優良な農地を求めています。
市街化地域の農地は転用で、市街化調整区域の農地は農地集積バンクと、制度として一応の活用方法はありますから、選択肢をよく考えてみましょう。

もちろん、転用できる農地は活用方法も幅広く、売却・賃貸・自己利用と選べます。
しかし、何が最も得すると考えるよりも、何を選べるのか知って、確実に活用できる方法を選択するべきです。
今回詳しく取り扱わなかった農地の売却については、別でまとめてありますので、合わせてご覧ください。

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