山林の売買について。過去の事例から見る価格相場と税金

山林
あまり知られていませんが、日本の山林(森林)においては、約58%が私有林です。
ということは、全国の山林の6割がいずれ相続され、子の代、孫の代と伝えられるにつれて、処分に困る人が出てくることを意味しています。

実際にも、田舎に二束三文の山林を持っていて、何をするわけでもなく放置しているケースは多く、特に親や祖先が何かのきっかけで購入した例が多いようです。
山林の地価は安いので、よほど広大でなければ固定資産税も少なく、あまり気にせず放置されるのかもしれません。

しかし、いつかは処分を考えるときが来るはずで、それが今なら売買についても考えてみてはどうでしょうか。
山林の売買に特別な許可は必要なく、買い手がいれば不動産売買としての手続きには変わりないですし、山林を専門に扱う不動産会社も存在します。

ところが、山林には独特の問題があって、かんたんに売買しようとしても一筋縄ではいかない事情を持っています。

山林売買の問題点

山林には、土地が広く地価が低いという当たり前の状況を伴いますが、これが売買において大きな問題になってきます。

公募面積と実測面積の違い

山林にも登記簿が存在し、法務局で他の不動産と同じように管理されます。
違うのは、登記簿上の公募面積と、実際の面積である実測面積が大きく異なる場合があり、元々の土地が広いだけに誤差も非常に大きいという点です。

実は山林に限らず、公募面積と実測面積が異なる例は、平地でも良くあります。
公募面積の方が小さければ、売主は広い土地を狭い土地として売るので損をしてしまい、逆に実測面積の方が小さければ、狭い土地を広い土地として買う買主が損をします。
ですから、平地の不動産売買では、公平な取引を行うために事前に測量を行って、境界も明確にした上で売買されるのが通常です。

しかし、山林を測量すると、その広さから膨大な費用がかかり、隣地の所有者との境界を明確にしていくのは、あまりにも不経済で費用対効果が得られません。
そのため、山林では公募面積で売買されるのが通例になっています。

成熟していない売買市場

どのような売買対象も、売り手と買い手の総数が多くなければ、市場は活性化せず規模も大きくならないのは当然です。
山林売買では、私有林のごく一部が売りに出されている程度で、買い手も少なく市場が成熟していません。

市場規模の小ささは、つまり売買しようとしても成約に至らない、または買い手がまったく現れない可能性を示し、かんたんには売れない土地であることは覚悟が必要です。

山林の相場は不安定

山林の場合には、不動産売買が交渉で成り立つ特徴を色濃く映し、取引の少なさから相場が確立されていない背景もあって、売買価格は当事者次第です。
売主も買主も、より条件の良い相手を探したいのですが、絶対数が少なすぎるために相手がいるだけでも貴重なチャンスです。

そして、どちらかというと山林を持て余している売りたい側の方が、買いたい側の価格交渉に屈してしまうことは予想できます。
高く売りたいと思っても、そのチャンスが少ないために仕方がないでしょう。

なお、山林は樹木の種類によって価格は変わり、樹木は地価と連動しないことも、相場の把握を難しくしている要因です。
また、林道に接していると、それだけ価値が高くなるのは平地と変わりません。

山林の売買傾向と斡旋サービスの活用

山林の売買に問題点が多いといっても、買う人がいるから価格があり、小さいながらも市場は形成されています。

まずは、保有する山林にどのくらいの需要があるか把握したいところですが、山林ではそれすらも困難です。
したがって、山林がどの地域に属するのか確認し、売買傾向を把握しておきましょう。

4つの山林地域と売買傾向

山林にも種類があり、宅地の付近から、交通に不便な奥深い山林まで様々です。

地域 特徴 価格傾向
都市近郊林地 市街地近郊で付近の宅地化に影響を受ける 高い
農村林地 農村部の周辺に位置する、いわゆる里山に該当 やや高い
林業本場林地 林業の中心になっている地域 やや低い
山村奥地林地 山の奥深い位置に存在し交通が不便 低い

それぞれの地域の特徴でわかる通り、市街地に近い都市近郊林地から離れていくにつれて、農村林地、林業本場林地、山村奥地林地と広がっていきます。

売買価格も市街地に近いほど高く、遠ざかるほど安くなるのは立地から当然です。

また、市街地に近い順で市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域/準都市計画区域、都市計画区域外という、都市計画区域での分け方もあります。
市街化調整区域までは投資目的の法人も参入しますが、都市計画区域外になると林業目的の法人や、使途不明の個人での購入が増えます。

まとめると、都市近郊林地や農村林地で集落の付近なら、宅地化が進んでいる地域ほど高値の可能性があり、買主も個人に限りません。
林業本場林地や山村奥地林地では、価格が安くなって個人の買主も比率は高まりますが、林業など個人以外でも取引がみられます。

また、外国人が日本の山林に投資している動きは以前から言われているので、仲介業者や転売目的で購入する業者に対する需要も考えられます。
ちなみに、売主は個人が80%なのに対し、買主は個人が59%と少ないことから、事業や公用目的の取引も少なくありません。

斡旋サービスの活用を考える

全国にある森林組合(もしくは森林組合連合会)の中には、斡旋サービスをしている組合もあって、山林売買のマッチングをしてくれます。
全国的な規模ではなく、管理下にある地域の山林を取り扱うにすぎないですが、閲覧する人は確実に山林に興味を持っていますから、一定の効果はあるでしょう。

他にも、民間の運営会社ですが、日本では数少ない山林売買の仲介をしてくれる、山林バンク というホームページがあります。

山林バンク
山林バンク

山林という特殊な地目であるため、普通の不動産会社ではなかなか扱われず、山林バンクのように特化して扱っている業者の存在は貴重です。
山林バンクに登録したからといって売れる保証はまったくないですが、手をこまねいているくらいなら、こうしたサービスを利用するのも1つの手です。

また、登録しなくても売りに出されている物件をみれば、実際の山林がどのくらいで取引されているか知ることもできますし、役に立つ情報もあるでしょう。

山林売買の相場を知る

すべての不動産は固有物件で、取引数が少ない山林では相場が形成されにくいですが、売買事例の統計を取っていくと、ある程度の傾向は相場としてみて取れます。
ここで紹介する相場は、あくまでも統計データに基づいているので、保有する山林が同じ価格帯で売れると考えず、参考程度としてください。

山林全体でみた場合、坪100円もあれば坪10,000円以上もあるので、地域性が非常に大事になってきますし、宅地を含んだ山林なら評価額も変わります。
ただし、半分以上は坪1,000円以下で取引されており、過度の期待は禁物で夢を見てもロクなことはありません。

地域 相場傾向 買主傾向
都市近郊林地 最頻値は1,000~4,999円/㎡
500~999円/㎡、5,000円超/㎡も多い
500円/㎡を超えると個人以外が多くなる
農村林地 半分以上が300円/㎡未満
高くても1,000円/㎡までがほとんど
個人の方が多く、価格の安さが影響
林業本場林地 100円/㎡未満に大半が集中
個人以外では300円~499円㎡が多い
絶対数は少ないが安価な山林は個人
山村奥地林地 林業本場林地と同様100円/㎡未満が大半
高くても300円/㎡未満
個人以外は5,000円/㎡まで広く分布

全体的な相場としては、都市近郊林地なら1,000円/㎡以上、農村林地は1,000円/㎡未満、林業本場林地と山村奥地林地は50円/㎡未満となり、宅地化の影響で大きく価格に差が付く結果となります。

また、買主傾向は300円/㎡(坪約1,000円)を境に個人と個人以外で分かれ、資力の問題から、個人では農村林地での購入が多くみられます。
都市計画区域で分けると、市街化調整区域では価格が高いため個人以外が、個人では都市計画区域外での取引が盛んです。

山林売買の仲介手数料と税金

山林売買の仲介手数料と税金は、平地の売買と次の点で少し異なります。

  1. 山林は建物を建てる目的の土地ではない
  2. 山林はお金に換えられる樹木がある

1の土地の目的は仲介手数料に、2の樹木があることは税金に関係します。

仲介手数料はかからない場合もある

不動産の売買による不動産会社への仲介手数料は、地目に関係なく建物を建てるための土地として売買される場合、宅地建物取引業法の規制を受けて上限があります。
つまり、地目が山林でも、明らかに建物を建てるため、もしくは現況で宅地を含むなら法律で認められる次の上限額です。

売買価格の200万円まで:5%
売買価格の200万円から400万円まで:4%
売買価格の400万円を超える部分:3%

例えば、売買価格が300万円なら、200万円の5%=10万円と、300万円から200万円を引いた100万円の4%=4万円になり、合計14万円です。
売買価格が400万円を超えれば、売買価格×3%+6万円で計算できます。

しかし、建物を建てない(建たない)山林を売買するときは 、宅地建物取引業法の制約を受けませんから、仲介手数料にも制限はありません。
当事者の契約行為に委ねられ、自由に手数料を決めることが可能で、無料でも固定額でも一定率でも法には触れないので、実際の手数料は不明です。

また、たとえ建物を建てる(建っている)山林でも、仲介を業としていない者に仲介してもらった場合は、同じように法律の規制を受けず、仲介手数料は自由です。

税金は山林所得 と譲渡所得の2つある

元々、山林に生えている樹木は、伐採しての売買や立木のままでの売買が可能で、土地とは別に存在していると解されます。
言い方を変えれば、建物がある土地を建物ごと売買するのと似たようなものです。

ですから、立木がある山林を売買するときは、立木に対する山林所得と、土地に対する譲渡所得を分けて考えなければなりません。
どちらも所得があれば確定申告が必要で、それぞれは別に申告の必要があります。

つまり、負担するべき税金は、山林所得への税金+譲渡所得への税金ですなのですが、売買契約においても、立木部分と土地部分に分けて売却価格を設けないと、確定申告が面倒 になります。

立木の部分は山林所得で申告

山林所得が発生するのは、取得から5年を超えて立木の部分を譲渡したときです。
取得から5年以内の山林の売買では、事業として行っていれば事業所得、それ以外の一般の人は雑所得として扱われます。

山林所得は分離課税になっており、他の所得とは異なる税率で計算されます。

山林所得=収入金額-必要経費
課税山林所得=山林所得-特別控除額最大50万円
※場合によって青色申告特別控除額最大10万円がさらに控除できます。

収入金額:立木を譲渡したことによる収入
必要経費:取得費、植林費、育成費、管理費など
特別控除額50万円:山林所得に認められる特別控除

ところが、山林の場合には相続で取得するケースも多く、必要経費として計上できる取得費等が不明なことも少なくありません。
こうした性質から特例が設けられており、15年以上(正確には譲渡した年の15年前の12月31日以前から)保有した場合は、相続や贈与であっても特例が適用されます。

例えば、自分への相続が5年以内でも、親の取得が15年以上前なら特例を適用できることになり、特例では上記の必要経費の部分について次のように計算します。

必要経費=(収入金額-伐採・譲渡費用)×50%-伐採・譲渡費用

このようにして得られた課税山林所得に対し、所得税率を用いて税額を計算します。

山林所得税額=課税山林所得×1/5×所得税率×5

一度1/5を掛けて(5で割って)所得税率を掛け、さらに5倍しているのが特徴です。
5で割って5を掛けると元に戻りそうですが、所得税が累進課税(課税対象が大きいほど税率が高い)になっている関係で、所得税率を掛けたときの金額が変わってきます。

結果として、山林所得が大きくても1/5の所得とみなした所得税率が適用され、低い税率で課税されるようになっています。
この方法は、「5分5乗方式」と呼ばれる特別な課税方式で、立木という形成されるまでに何十年もかかる資産に対しては、税金を軽減しようとする配慮です。

土地の部分は譲渡所得で申告

土地に対しては、山林でも平地でも同じように譲渡所得が発生すると課税されます。
譲渡所得の基本的な計算式は次の通りで、譲渡所得も分離課税になっており、他の所得とは異なる税率です。

譲渡所得=譲渡収入-譲渡費用-取得費
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除額

譲渡収入:基本的には売却代金と考えて良い
譲渡費用:売却に必要だった費用
取得費:山林を取得したときの費用
特別控除額:山林で適用になる事例は少ない

判断に困るとすれば取得費と特別控除額で、相続等で取得費が不明なら、譲渡収入の5%を取得費として計上可能です。
特別控除額は、公的な事業で収用される場合を除くとマイホーム特例ですが、山林の特性からマイホームはあり得ず、私的な売買では控除されないと考えた方が無難です。

得られた課税譲渡所得に対し、山林の所有期間に応じて5年以内なら短期譲渡所得(39.63%)、5年を超えると長期譲渡所得(20.315%)の高い税率が課せられます。

譲渡所得税額=課税譲渡所得×譲渡所得税率(短期・長期)

ただし、山林を取得から短期で売買することは少なく、相続では故人が取得した時点から起算されるので、大半は長期譲渡所得になるでしょう。
また、短期・長期の境目は5年ですが、取得から譲渡までの正確な期間が5年ではなく、取得から譲渡した年の1月1日までで判定される点は注意です。

その他の税金

山林所得と譲渡所得以外に課税されるとすれば、売買契約書に貼り付ける収入印紙による印紙税と、登記の際に発生する登録免許税が考えられます。

山林でも売買契約書を取り交わすのは普通ですから、印紙税も納付するはずです。
しかし、山林は売却金額が安く、5,000万円以下の売買でも10,000円以下、500万円以下の売買なら1,000円以下と安価なので気にするほどではありません。
※ただし、軽減措置(平成30年3月31日まで)を適用できなければ約2倍

また、登録免許税は買主負担になることが多く、仮に売主が負担することになるとしても、山林の価額(固定資産評価額)の2%(平成27年3月31日までは1.5%)です。
広大で取引価格が大きい山林の場合や、固定資産評価額よりもはるかに安い金額での売買でなければ、大きな負担ではないでしょう。

なお、売買で仲介手数料を支払っていれば、仲介手数料には消費税の負担があります。

まとめ

山林は重要な資源(木や水)を保有していますが、用途が非常に限られることもあって、極めて安く取引されるのが実情です。
その割には自分で管理できるような土地でもなく、処分を考えている人が多くいます。

日常会話でも良く「ひと山いくら」言われるように、現在でも山林は、面積や樹木の価値を計測した正確な金額での売買はされていません。
あまりにも買い叩かれると売る気を無くしますが、保有していても意味がないなら手放せるときに手放した方が得策です。

また、市場規模が小さいので、マッチングサイトの活用など積極的に動いて買い手を探さないと、待っていて売れるような物件でもありません。
ただし、近くまで宅地化が進んでいるのなら、将来は開発が進んで高くなる可能性もあるので、立木だけの売却も含め個別に一考の余地はあるでしょう。

最後に、山林の活用方法についても考えてみましたので、興味があればご覧ください。

資材・自然・土地の3つで考える山林活用の可能性
自然豊かな田舎だからこそ多い問題として、相続による山林の所有があります。 しかも、相続があって初めて親が山林を所有していたと知るパ...
不動産会社8社に査定を依頼したら(山林)
不動産会社8社に査定を依頼したら330万円の差があった

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