古い家のリフォームのポイントとメリットデメリット

家が古くなってくると、あちこちで欠陥が出てくるのは当然のことです。
そこで考えたいのはリフォームですが、リフォームをする理由は、より住みやすくするためや、売却や賃貸前提など事情は人それぞれです。

欠陥の規模が小さければその都度修理しながら、もしくは支障がなければ放置して生活するのですが、いつかは大がかりに直さなくてはなりません。

しかし、予算にも限りがあるので、どの箇所をどのように直すのか、その優先順位や結果のイメージも大切でしょう。
この記事では、古い家のリフォームにおけるポイントを解説していきます。

なお、リフォームとリノベーションは厳密にいえば違いますが、「フルリフォーム」という言葉もあって、その区別は曖昧なので、ここでは同じと考えて問題ありません。

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古い家が抱える問題の例とリフォームする基準

何か問題があってリフォームするのですから、抱える問題の大小と、個人の許容範囲によって、リフォームする基準はそれぞれ異なります。
そのため、一般的な基準の紹介に過ぎませんが、次のように考えてはどうでしょうか?

断熱

どこから寒さが入っているのか、可能な限り特定する必要があります。
候補としては、窓、床、天井、壁になり、それぞれ異なる施工で断熱効果を高めます。

窓からの冷えは比較的分かりやすく、普通は暖かいはずの2階が冷えるなら、天井も考えられますし、どことなく家全体が冷えるのなら、内壁・外壁の断熱になります。

床の冷えについては、床暖房でしのぐ方法もあるとはいえ、冷え切った床を床暖房で温めるのはエネルギー効率が悪く、最初から床が冷えないように断熱工事をした上で、それでも不足すれば床暖房を考えます。

防音

戸建てでは、床下の防音をそこまで考慮する必要がないので、窓と壁が主な対象です。
中から外に漏れる音、外から中に入る音の違いはあっても、施工としては次のようなものです。

  • 二重窓・防音窓への交換
  • 壁に吸音材を充てんする
  • 遮音シートや遮音ボードを取り付ける

また、気密性や断熱性を上げるリフォームをすれば、必然的に防音効果は高まりますし、通気口など常時開口している部分がある以上は、完全には防音できません。
楽器などの使用で防音に特化するのでなければ、他の目的で行うリフォームの二次効果を確かめてみてから、防音リフォームを判断してもよいでしょう。

歪み/強度

一目瞭然の歪みがあれば、原因は地盤・基礎・梁や柱のズレを推測しますが、複合的に起こっているケースもあり、素人にはなかなか判断が付かないでしょう。
分かりやすいのは、戸や扉が開きにくい・壁にひびが入っているケースで、床ではビー玉を転がすのもよく聞く話です。

自分では平気だと思っていても、一度歪んだ家は、重心がずれてさらに歪んでいくため、建築士事務所や住宅診断士に依頼して、住宅診断(ホームインスペクションと呼ばれます)してもらうことで危険度や対処方法もはっきりします。

耐震性

耐震性に1つ大きく関係するのが築年数で、築35年以上(建築が1981年よりも前)になると、耐震基準が古く、いわゆる新耐震基準を満たしていない可能性があります。

また、1981年以降に建築された家でも、新築時と現在で同じ耐震性能を維持しているのはあり得ないこと、施工技術や建築部材は日々進歩しており、古いほど懸念が多いことを考えれば、一度耐震診断を受けてみることをおススメします。

耐震診断は、自治体が補助金制度を用意しており、安く依頼することができますので、先に自治体に補助金対象を聞いてから、依頼先を決めるのがベストです。

老朽化(雨漏り・腐食)

雨漏りは体感できる不具合で分かりやすいですが、床下、壁内部の腐食は、室内側に表面的な変化が現れないと判断ができない箇所です。
水回りの床下に限定すると、腐食によって床がフワフワしたりギシギシしたりします。

また、古い家は風呂がユニットバスではなく、水のかかる場所にタイル目地の割れ目があれば、風呂周りに何らかのダメージを与えていると考えるべきです。
他にも、壁紙のシミやカビの臭いが原因で、壁内部の腐食がわかることもあります。

事前診断として、雨漏りは屋根裏から、床や土台の腐食は床下から確認できる可能性もあるとはいえ、リフォームを始めてから発見されるケースも多いです。
腐食している可能性も考えて、予算は多めに確保しておきたいところです。

間取りや使いにくさ

好みの個人差が大きい部分ですが、1つの基準として、家族構成の変化が挙げられます。
例えば、子供が生まれて子供部屋を作っても、いつかは独立して不要になりますし、高齢者には高齢者の住みやすい家があります。

手すりの設置やドアの交換など小規模なリフォームから、家族構成に合わせた間取りの再構成、家全体でバリアフリーの導入など大規模なリフォームまで、家族の要望と予算を踏まえた上で決めていくとよいでしょう。

シロアリ被害

基本的には床下に潜って、被害が起こっていないか確認するのが確実です。
ただし、そもそもシロアリ被害かどうかを判断できるスキルがないなら、専門業者に依頼して診断してもらうしかありません。

湿気による腐食もシロアリによる腐食も、床がギシギシすることは多いですが、水回りでもない廊下がギシギシするならシロアリの可能性が考えられます。
羽アリを見た記憶がある、基礎部分に蟻道(シロアリが土や糞から作る細長い通路で目視できる)がある場合は、ほぼ確実に被害を受けているでしょう。

シロアリについては、駆除で済むケースと、被害が大きくてリフォームするしかないケースに分かれるため、診断結果次第となります。

古い家のリフォームで気を付けること

リフォームという概念は広く、家を手直しすればすべてリフォームに相当しますが、何をリフォームするかによって、法令上の制限、強度上の問題、他にも気付きにくい注意点が複数存在します。

容積率/建蔽率による増床の制限

土地には都市計画法によって定められた用途があり、その用途に応じて建てられる建物が建築基準法で制限されています。
これは敷地面積に対する建築面積(概ね家を上から見たときの面積)の制限である「建ぺい率」と、延床面積(概ねすべての床を加えた面積)の制限である「容積率」が関係します。

容積率に余裕を持って建築していれば、内部リフォームで増床があっても問題ありませんが、新築時はできるだけ部屋を広くしたいので、延床面積が容積率の制限近くで設計されていることも多いようです。

そうなると、リフォームでは希望通りの増床ができなくなり、高さが低く延床面積に算入されない、屋根裏部屋などしか作れなくなります。
増床はリフォームでできるかどうかよりも、法律の制限に引っ掛からないか確認です。

耐久性に関わる間取りの変更や開口(窓・扉)の増設の制限

壁を取り去って2部屋を繋げる、壁を作って1部屋を区切るといった、間仕切り壁の増減による単純な間取り変更は、柱や梁で家を支える軸組工法なら比較的容易です。
しかし、ツーバイフォー工法のように、壁で家を支えているときは、壁を取り去ることで強度が落ちるので、ゆがみの考慮や強度の再計算が必要です。

同様の理由で、耐力壁や柱を取り去って間取りを変更すると、軸組工法でも家の強度に関わるため、大がかりにはできず、建築確認も必要と考えるべきです。

もう1つ、強度に影響するリフォームでは、開口部(窓・扉)の増設が該当します。
壁に穴を開けて窓を増やす、壁を切り取って扉を増やすくらいは、いかにもかんたんにできると思うかもしれません。

窓は採光目的から必然的に壁の厚い外壁に作られますが、壁が開いている部分が増えると、それだけ家の強度を落とす結果に繋がります。
扉も同じで、外との出入口はもちろん、室内の扉もかんたんにできるとは限りません。

耐震性を上げるために、窓や扉のない壁には、筋交いや構造用合板が入った耐力壁になっていること多く、窓や扉がないのにも理由はあります。
ですから、窓や扉を増設するときは、強度についても業者とよく相談しましょう。

高電圧設備や上下水道設備の対応

オール電化や、床暖房、IHクッキングヒーター、エコキュートなどの高電圧設備への変更は、リフォームでも比較的人気の内容です。
基本的に電気工事ですが、新しい設備導入に伴って、例えばエコキュートならタンク設置のための基礎工事や配管など、他の工事が不可欠なケースもあります。

また、分電盤までの電線の太さが足りなくなる容量不足も起こり得るので、想定外の費用が発生しやすい特徴もあるのが高電圧設備です。

上下水道設備については、キッチン/台所、浴室/風呂、洗面所/トイレなど、配管さえ可能な設置場所なら、増設も含めリフォームすることは可能です。
ただし、水道を使う設備が多くなると、同時利用によって最大使用量が増えることから、引込管の口径も関係してきます。

引込管の特徴として、現在の家よりも前に建てられた家で引かれ、現在の家ではそのまま使っている場合、年数がかなり古いことも予想されます。
引込管は自費なので、耐久性や口径面で交換するときは出費が増えます。

大がかりなリフォームは建築確認が必要

少し大きなリフォームやリノベーションを考えると、階段を動かしたい要望もあるかもしれません。
例えば階段下はデッドスペースになっていることも多く、リフォームを期に有効活用したいと考えるのは当然です。

もちろん、工事そのものは可能ですが、階段は建築基準法上の主要構造に該当して、工事内容によっては建築確認が必要な場合もあります。
建築基準法上の主要構造に該当するのは、壁、柱、床(最下階を除く)、はり、屋根または階段ですから、これらの大きな変更を伴うときは建築確認が必要だと思いましょう。

当然ながら、増床においても建築確認を必要とするのは同じですが、防火地域、準防火地域以外であれば、10㎡以下の増床は建築確認が不要とされています。

内容によっては新築より高い

家の全体に対してリフォームすることはできますが、部分リフォーム代金を積算してみると、新築(建て替え)する方が安いことも多いです。
工事というのはまとめて行う方が安く、個別工事を積み重ねる総リフォームは、工事費単価が高くなることも理由の1つです。

新築以上にお金をかけるほど思い入れの深い家だとしても、現実的な視点では、結局のところリフォームはリフォームです。
今後何十年も住み続ける、もしくは次世代に引き継ぐつもりでいるとき、後からまたリフォームが必要になるくらいなら、建て替えも候補になるでしょう。

リフォームで解決するメリット

リフォームするより建て替えたほうが安いならともかく、建て替えるほどではないのに建て替えてしまうのも考えものです。
リフォームには建て替えでは得られないよさがあるので、判断の参考にしてください。

よい素材や設備を再利用できる

まだ使える部分が多いのに建て替えてしまうのは、エコの概念から外れます。
例えばキッチン、洗面台など、十分に使える設備があっても、建て替えのときは基本的に設備類を新調します。

理屈としては、解体前に取り外して保管場所を確保すれば再利用できますが、大抵はきれいに取り外すための手間や、建て替えまで長期間保管する場所の確保、運搬費等が膨らんで、新調する方が安いからです。

リフォームなら工期が短いので、一時的な保管場所さえ確保できれば再利用できます。
次々と現れる不具合を、随時リフォームしながら使っていくのは、トータルでは不経済でも、その時点での出費が抑えられるのも助かる点です。

躯体や外観を残すことができる

誰でも生まれ育った家の存在は大きく、大人になっても忘れることはありません。
そして、自分が建てた家なら、なおさら建てるときの苦労やそこで暮らした日々が思い出され、かんたんに処分できるものではないでしょう。

古くても、逆に趣(おもむき)があると感じる人は多いですし、どうしても家を壊してしまうことに抵抗があるのは、人として普通の感情です。
リフォームなら、少なくとも面影を残しながら新しくでき、家の歴史の1ページとして、リフォームが加わっても抵抗は小さいでしょう。

固定資産税の上昇を抑える

建て替えをすると、新築なので固定資産税が高額になることは避けられません。
リフォームの場合には、小規模なら基本的に固定資産税は上がらず、大規模にリフォームしても、上がるのは家の価値が上がった分だけです。

小規模なリフォームで固定資産税が上がらないのは、そもそも建物の価値が大きく上がるほどのリフォームに該当しないことと、建築確認申請が必要なリフォームでなければ、役所が実態を把握できないからです。

したがって、増床があった場合と、主要構造に大きな変更がなければ、原則として固定資産税が上がることはありません。

まとめ

リフォームをするべきかどうかの判断は、人によって千差万別で、少しくらい我慢できる人もいれば、新築後数年で耐えきれずにリフォームする人も大勢います。
何をきっかけとするかは個人差だとして、問題は希望どおりにできるかどうかです。

リフォームすれば、何でも希望どおりに叶うわけではなく、説明してきたように法令上や構造上の制限を受けるため、模型を作るのと家を作るのは訳が違います。
まずは、リフォームが必要なのか、必要であればどのように行うのかを、信頼できる建築士やリフォーム業者から助言を受け、費用面の検討を加えてみましょう。

また、リフォームは一度で終わるものではなく、古い家は次々と不具合が出てくるので、すぐに必要なリフォームと近い将来必要になりそうなリフォームは、まとめて一度に行ったほうが、色々な面で効率がよくなります。