サービス付き高齢者向け住宅のメリットデメリットや補助金

サービス付き高齢者住宅

少子高齢化は日本全国での課題ですが、中でも高齢者比率が高い地方の農村部で著しく、高齢者向けの施設に需要があることは間違いありません。

田舎の静けさと、保養地としての環境の良さは高齢者にも好まれ、サービス付き高齢者向け住宅を始めとする高齢者向け施設は、比較的田舎でも見られます。
その一方で、人口密度が低いことや人材確保の問題、面会に来る家族の利便性から、都市部の付近で作られやすいのも確かです。

ここではサービス付き高齢者向け住宅の概要と、田舎での需要について考察し、実現性について探っていきたいと思います。

成功事例

  • 20戸にヘルパーステーションを併設する形態
  • 地方の小都市外周から10kmほど外れた農村部
  • 路線バス以外に公共機関はなく交通は不便
  • 住宅金融支援機構の融資
  • 訪問介護事業者の一括借り上げ
  • 競合を質の向上で打開し高い賃料を実現

サービス付き高齢者向け住宅では、地主が自ら運営するのはリスクも高く、この例では提携する訪問介護事業者に一括借り上げしてもらっています。
地主は土地と建物を貸すだけの立場ですが、借主である地元の訪問介護事業者と事前にコンセプトを擦り合わせ、居住部分とサービスの両方で質を上げて成功しました。

資金は住宅金融支援機構の35年固定金利を利用、土地と建物を担保に入れています。
一括借り上げなので手残りは若干少ないですが、介護事業に詳しくないなら、迂闊に手を出さずに安定収入を目指すべきでしょう。

地方に多くみられるように、生活に車が必須の地域では、交通の便が少しくらい悪くても面会者にあまり不都合はなく、立地を深く考えなくてよいメリットがあります。

サービス付き高齢者向け住宅とは

ふくふく荘

大阪府堺市 ふくふく荘

高齢者向け住宅は、制度上いくつか種類がありましたが、2011年に法律が改正され、現在はサービス付き高齢者向け住宅に統合されました。
名称の通り、高齢者住宅にサービスが付いた形で、あくまでも賃貸住宅が基本です。

サービスは訪問介護、デイサービス、医療等の福祉分野で、現在これらの福祉サービスが不可欠な人だけではなく、将来の利用を考えている健常な人も対象にしています。
したがって、普通の集合住宅にサービスを行う施設を併設した形態です。

また、少子高齢化への対応として、国はサービス付き高齢者向け住宅の普及を促進しており、補助金制度が設けられています。

サービス付き高齢者向け住宅と老人ホームの違い

高齢者が居住して福祉サービスを受ける点では、以前からある有料の老人ホームとの違いが良くわからないかもしれません。

老人ホームの場合、介護が必要な高齢者で、家族が対応しきれない場合に入所しますから、老人ホームでの介護がセットに考えられています。
そのため、終身で利用できる「利用権方式」での契約が主体で、賃貸借契約を基本とするサービス付き高齢者向け住宅とは異なります。

サービス付き高齢者向け住宅では、賃貸借契約とサービスの利用契約が分かれており、サービスは入居者が任意で利用するものです。
入居者は、利用した分の料金を介護保険によって一部負担して支払います。

必須サービスは、状況把握(安否確認)と生活相談ですが、サービス付き高齢者向け住宅ほとんどは福祉サービスを提供しています。
仮に福祉サービスを提供しなくても、食事サービスは事実上の必須に近い扱いです。

一般に複数の福祉サービスを併設するのは事業規模が大きくなることから、どの福祉サービスを併設するのかで入居希望者も変わってくるでしょう。

登録制度と登録基準

賃貸住宅があって福祉サービス提供があれば、サービス付き高齢者向け住宅とは言えますが、狭義には都道府県知事の登録を受ける必要があります。
登録することで補助金を受けられるようになり、住宅金融支援機構での融資対象にもなるので、始めるなら登録して出資を抑えない手はありません。

ただし、“登録”とはいえ基準があり、基準に適合していないと登録を拒否されます。

基準対象 主な基準
住宅 ・バリアフリー(段差のない床、廊下の幅78cm以上、出入口の幅75cm以上、浴室と階段に手すり)
・原則として各戸が25㎡以上(居間、台所、食堂など共同利用できる十分なスペースがあれば18㎡以上)
・各戸に台所、水洗トイレ、収納設備、洗面設備、浴室完備(共同利用により同等以上の居住環境が保たれれば、台所、収納設備、浴室は共用可)
サービス ・必須サービス:状況把握サービスと生活相談サービス(最低でもケアの専門家が日中常駐)
・任意サービス:その他の福祉サービス
契約 ・書面による契約
・居住部分が明示された契約
・敷金、家賃、サービス料以外の受領禁止
・工事完成まで前払い金受領禁止
・その他(高齢者の居住の安定が図るための制限)

メリットとデメリット

サービス付き高齢者向け住宅が持つメリットとデメリットは、他の賃貸住宅とは異なり独特の性質を持っています。

メリット

一般向けの賃貸住宅は需要がない地域でも、近隣も含めて中高齢層の比率が高い地域なら、潜在的な入居対象になる可能性があります。
生活の拠点である一般向け住宅は、利便性の高い順に入居者が決まりますが、サービス付き高齢者向け住宅では福祉施設の性質も兼ね備えているからです。

離れて暮らす家族が心配して、サービス付き高齢者向け住宅に入居させるパターンが多く、それほど乱立もしない分野なので広範囲での需要が見込めます。
田舎では不利な、利便性を大きく問われないのがメリットと言えます。

デメリット

福祉施設の性質も兼ね備えていることは、デメリットにもなりかねません。
サービス付き高齢者向け住宅と老人ホームの違いは、広く一般に認知されているものではなく、老人ホームと勘違いしている人も数多くいます。

また、提供するサービスの質やスタッフの対応が高いレベルで問われますから、サービス事業者が経営に大きく影響します。
良い建物を建てても、サービス事業者の選定で間違えると入居者を失うデメリットがあるのは、一般向け賃貸住宅における管理会社の選定とは比べ物になりません。

土地や人材の条件

既に説明の通り、サービス付き高齢者向け住宅はさほど立地を問われません。
しかし、老人ホームと違って健康で自立している人も入居対象になるため、あまりにも利便性が低い環境では、入居者本人も面会の家族も不便です。

この点は、共用部分に売店等を設置することでもある程度緩和されますから、不便な立地である場合には、総合的に住環境を整える工夫が必要です。

住宅部分は全体の約60%

賃貸住宅になる住宅とサービス施設を併せ持つため、サービス付き高齢者向け住宅では敷地の収益効率が必ず下がってしまいます。
この点は、ほとんどが住宅部分になる一般向けの賃貸住宅と違い、メインとなる賃貸住宅の比率が小さいことを意味します。

平均的な数値では、延床面積に対する住宅部分は60%程度になり、残りはサービス施設や共用部分で使われますので、少なすぎる戸数では収益が上がらないでしょう。
目安として、20戸未満ではサービスを縮小するなどの調整が必要かもしれません。

また、高齢者の入居なので高層化は難しく、低層か平屋で建てることが多くなります。
仮に平屋で60%を住宅部分、40%をその他部分とすると、戸数とその面積から、建物に対する敷地は次のように求められます。

全体の広さ=戸数×部屋の広さ÷0.6
20戸を20㎡で建てる場合:20戸×20㎡÷0.6≒667㎡
30戸を20㎡で建てる場合:30戸×20㎡÷0.6≒1,000㎡

必要な人材

田舎で行うサービス付き高齢者向け住宅は、建てられるかどうかよりも、経営できるかどうかに問題があります。

必須のサービスになっている状況把握サービスと生活相談サービスは、ケアの専門家による常駐を必要としますし、福祉サービスの提供も事業者がいなくては行えません。
食事や清掃のスタッフも必要で、思ったより「人を使う賃貸住宅」です。

これらの人材は、サービス事業なら医療や福祉関係の事業者と提携や委託、食事や清掃のスタッフは自己調達か委託が考えられます。
いずれにしても、地主自らがサービス事業も経営することは少なく、パートナーになる事業者がいなければ何も始まりません。

なお、サービス付き高齢者向け住宅の事業モデルとして、不動産会社や建設会社等が間に入って一括借り上げする形態もあります。
この場合、間に入った業者がサービス事業者に転貸するので、地主としては何もすることなく賃料を受け取れますが、間に入ることで当然に収益は低下します。

投資と収益

サービス付き高齢者向け住宅は国が推進すべき事業であるため、補助金制度があります。

その性質上建設にかかる坪単価が高くなりがちですが、入居者が求めるニーズに通常の賃貸住宅以上のサービスがあるため、賃料が高く設定できるという特徴もあります。

サービス付き高齢者住宅の坪単価

サービス付き高齢者向け住宅の坪単価は高く、その理由には2つあります。
1つは言うまでもなく、住宅ではないサービス施設にお金がかかる点で、もう1つは各部屋の広さが狭いために、設備工事等の占める割合が増える点です。

一概に言えるものではないですが、木造でも坪単価で50万円以上は考えなくてはならず、200坪(約660㎡)で1億円以上の計算です。
前述の20戸を20㎡で建てる場合に近いので、1戸で500万円以上とも言えます。

収益と利回り

収入については、月額利用料として家賃、食費、共益費等の合計額が、1戸で10万円から15万円程度まで幅広く、田舎でもこの程度の利用料は普通にあります。
しかし、食費や公益費はほとんど利益にならず、実質的な収入は家賃部分です。

家賃を5万円、20戸の入居率を80%とすると、月間80万円(年間960万円)に対し、投資が1億円なら利回りは9.6%で、補助金の存在がさらに利回りを引き上げます。
他には、サービス事業を自分で行えば介護保険収入もありますが、一般にはサービス事業者に委託してテナント料を得る形態で、若干の上乗せ程度でしょう。

それでも、10%程度の利回りがあれば十分に思えるでしょうか?
土地がある前提、諸経費等を無視してこの数字で、肝心の入居率は評判に大きく左右される不安定さもあって、住宅部分の比率が小さいことは収益面でやはり不利です。

一括借り上げ契約にすると、経営面を考えなくて済む代わりに収益は落ちますが、実現できる方法は人それぞれですし、個人には大きい投資になるので、事業計画と収支予測は慎重に行いましょう。

補助金制度

サービス付き高齢者向け住宅では、住宅用の建物とサービス用の高齢者生活支援施設が一体でも併設でも、形態を問わず補助金を受けられる制度があります。

新築 改修 上限額
住宅部分 建築費の1/10 建築費の1/3 戸数×100万円
高齢者生活支援施設 建築費の1/10 建築費の1/3 施設数×1,000万円

ただし、補助金はサービス付き高齢者向け住宅を登録した場合に限られ、申請して交付が決定するまでは工事を着工することができません。

補助金事務を担当しているのは、サービス付き高齢者向け住宅整備事業事務局(以下、事務局)で、補助金申請から交付までの流れは次の通りです。

  1. 都道府県への登録と事務局での事前審査
  2. 補助金の交付申請
  3. 事務局での審査
  4. 補助金交付決定の通知
  5. サービス付き高齢者向け住宅の着工
  6. 完了実績報告の提出
  7. 補助金額の確定と支払い

それなりに面倒な手続きですが、補助金が住宅とサービス施設の両方で受けられる点は大きく、規模によっては数千万円になります。

田舎に需要はないのか?

人口比率だけを考えると、高齢者が多い田舎では、人口に対するサービス付き高齢者向け住宅の需要は高いと予測できます。
また、高齢になると慣れ親しんだ地元を離れたくない意識も強くなるので、ますます田舎の方が需要は高まると言えるでしょう。

しかし、同時に家から離れたくない意識も強く、認知症で手に負えず施設に入所させたり、持病の悪化で入院したりと、家を離れる事情は「仕方がない」からです。
軽度の生活支障程度では田舎の高齢者は動かず、ましてや健康なうちから、将来のためにサービス付き高齢者向け住宅を借りようとする需要には疑問が残ります。

つまり、需要は確かにありながらも、状況がひどくなるまで入居してこない可能性が高く、田舎では福祉サービスの質が重要視されるでしょう。
金額よりも質を問われるのは、家族感情からも当然の流れで、老人ホーム等の施設と区別して認知されていないことも加担して、競争は激しいのかもしれません。

なお、高齢者向け住宅の需要があるのは確かですが、それだけが田舎の土地活用の候補というわけではありません。
少ないながらにいくつか考えられる方法はるので、知っておいて損はないでしょう。

土地の有効活用方法一覧
土地活用には、一般的に言われるアパート・マンション・駐車場の経営の他に、コンテナでのトランクルームや太陽光発電、貸地、売却による資産組み換えもあります。それらを6つに分類し、それぞれの大まかな特徴を解説します。

まとめ

サービス付き高齢者向け住宅は、成功して評判を得られれば、田舎でも将来的に有望な投資対象になります。

高齢者は決して所得が高くはないですが、余生を過ごす場として、低額の利用料よりも質を求める傾向があると考えられます。
ですから、サービス事業者を安易に選ぶと、結局は信用を取り返すのに苦労します。

補助金があるとはいえ、投資が増えることに不安があるなら、一括借り上げの賃料保証を利用して、リスク回避をしながら運用してみることも視野に入れてみましょう。
プランは各社異なるので、資料などで確認してみてください。

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土地はあくまで保有する資産の1つで、自己使用や現金に切り替える売却も、“資産活用”の1つです。
その上で、一般的に土地活用と呼ばれる賃貸経営を行うのであれば、1つでも多くの可能性を探り、十分検討することが欠かせません。
賃貸経営は数十年の長期的な運営となるため、スタートしてからの方向転換は困難で、最初の準備にすべてがかかっていると言っても過言ではないのです。

各社のプランはバラエティ豊かなので、最初はプランを見比べるところから始めるだけでも勉強になるでしょう。
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