空き家と更地の固定資産税比較。空き家対策特別措置法の影響は?

空き家

田舎の空き家が増え続け、問題になっている背景の1つに、土地に対する固定資産税の特例による税負担の軽減があるとされています。

老朽化した家屋は、少なからず周囲に悪影響を与え、所有者としても取り壊してしまいたい気持ちはありながら、解体することで3~4倍に増えてしまう土地の固定資産税を考えると、どうしても踏み切れない事情があります。

そこで、政府は空き家対策を推進させるための法律を施行し、自治体も呼応するように空き家対策を進めている現状ですが、なかなか空き家の撤去は進みません。
だからといって、いつまでも空き家の放置を認めていては、限られた国土の有効活用を阻み、経済全体においてもマイナス要素が大きいため、対策が急がれています。

ここでは、空き家の解体によるメリットやデメリット、特に空き家を解体して更地にした場合の固定資産税の変化に注目し、その計算方法を紹介します。
場合によっては、解体した方が良い可能性もあるので、チェックしてみてください。

空き家を解体するメリットとデメリット

多くの人がデメリットを考えて空き家の解体を躊躇しますが、注意したいのは、空き家を解体しても必ずしもメリットやデメリットが生まれるとは限らない点です。

空き家解体のメリット

まず、現在のデメリットになっている、空き家の持つ潜在的な負の要素を考えてみます。
老朽化した空き家では倒壊の危険が、誰も関心を示さなければ犯罪の温床や失火の原因に、換気や手入れがないと害虫や害獣被害が、不法投棄による悪臭、地域の景観に悪影響を与えるケースもあり得ます。

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こうした負の要素は、所有者よりもむしろ、近所に住む人たちに被害をもたらします。
建物によって死角になり、他人の所有物なので気が付いても入れないという2つが原因で、建物がなければ残るのは不法投棄くらいでしょう。

また、更地にすることで見栄えがよくなり、土地が売れやすくなるメリットもあります。
解体を先にすると費用は売主負担ですが、売却価格に上乗せもできるので全体的な損失にはならず、売れやすくなる利益とも相殺されます。

ただし、この点については改築を希望する買主の期待に反するので、主要な構造部分が使える状態であれば、判断には迷うところです。

空き家解体のデメリット

デメリットは何と言っても解体費用で、木造でも坪2万円~3万円と呼ばれる解体費用は、使わない家に支払うにしては高額です。
更地としての売却予定が明確なら、解体費用は譲渡費用として計上されるのですが、田舎の空き家で売却差益を得られる可能性は低く、大抵は単なる負担金です。

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また、解体することで建築基準法の接道義務(原則として幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない)に抵触し、再建築不可物件として扱われると、価値が非常に低くなってしまうデメリットもあります。

他に大きいのが、冒頭でも述べた通り、家を解体すると固定資産税の特例から外れ、3~4倍になってしまう点で、解体費用+固定資産税増加分の負担は大きいでしょう。

固定資産税の特例とは?
土地が建物の敷地になっている場合、住宅1戸につき敷地200㎡までの固定資産税を1/6に、200㎡を超え床面積の10倍までの固定資産税を1/3に軽減する措置です。
都市計画税についても軽減率は低いですが、同様の措置が講じられています。

行政の空き家対策と解体費用の支援

老朽化した空き家に潜む危険の防止と、空き家や敷地の資産活用を促すために、政府は新たな法律を制定し、積極的に取り組む土台を固めました。
平成27年2月26日(一部の規定は同年5月26日)から「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家対策特別措置法)が施行されています。

この法律は、国が基本方針を打ち出し、自治体が必要な施策を行うためのガイドラインでもあり、なおかつ自治体による措置の根拠法にもなっています。
したがって、今後は空き家対策特別措置法によって、空き家は地域の自治体により整備される可能性が高くなります。

法律で定義される“特定空家等”とは

空き家対策特別措置法では、空き家全体を「空家等」と定義し、その中でも早急に対策が必要な空き家を「特定空家等」に分類しています。
空家等については、その実態を管理し、有効活用をするための対策計画の対象となる空き家ですが、特定空家等は行政として是正措置を講じる対象になっています。

特定空家等とは、空き家対策特別措置法第2条で次のように定義されています。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれがある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

これらの定義は抽象的であることから、国土交通省は特定空家等の是正措置についてガイドラインが示しています。
具体例も掲載されているので、目を通しておきたい資料です。

「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)

空家等への措置は3つ

空き家対策特別措置法で、空き家対策として規定された措置には3つあります。
特定空家等は空家等に含まれるので、特定空家等はすべての措置を受ける対象です。

  1. 特定空家等に対する措置(第14条)
  2. 空家等に対する財政上の措置(第15条第1項)
  3. 空家等に対する税制上の措置(第15条第2項)

それぞれの措置をかんたんに説明すると 、1の特定空家等に対する措置は、自治体から対策を迫られた空き家の所有者が対策に応じないとき、自治体が強制的に解体などをして、所有者に費用請求する措置です。

2の財政上の措置は、空き家対策をする自治体への財源を国が支援することを盛り込んでおり、最終的には空き家の所有者への補助・助成にも流れるはずです。

3の税制上の措置は、空き家対策による税制上の措置を自治体に認めるもので、特定空家等への固定資産税の特例を廃止する根拠になっています。

自治体による解体費用の補助

勘違いされやすいですが、解体費用の補助金交付は、空き家対策特別措置法以前から行われており、空き家再生等推進事業という名目で国が補助をしています。
つまり、国と自治体が補助金を出しあって、解体費用の負担を軽減している代わりに、自治体に予算枠があり予算枠を使い切ると申請が締め切られます。

解体費用の補助は、多くの自治体で行われているので、自分の所有する空き家の地域で、補助事業が行われていないか確認してみましょう。
補助金の金額は自治体の予算次第ですが、30万円~100万円程度までが多いようです。

なお、空き家対策特別措置法の施行によって、財政的な支援基盤を得た自治体が、さらに空き家対策に予算を投じると予測されるため補助金には注目です。

空き家と更地の固定資産税の計算事例

空き家付きと更地で、どのように固定資産税が変わるか計算してみます。
比較のポイントは、土地に対する固定資産税が更地に変わって高くなる点と、空き家に対する固定資産税がなくなる点です。

想定とする空き家と敷地の評価額は次の通りです。

家:2,000万円、土地:2万円/㎡ 家の評価額 土地の評価額
例1:木造築30年、土地200㎡ 280万円 280万円
例2:木造築15年、土地300㎡ 560万円 420万円

どちらの例も再建築価格2,000万円の家を想定、その7割=1,400万円を新築の評価額として、20年で2割の280万円まで減価償却(1年で56万円)しています。
例1は築30年で2割まで償却されていますが、例2は築15年で完全に償却が終わっておらず、1,400万円-15年×56万円=560万円が残価です。

土地はどちらの例でも地価2万円/㎡を想定、価格の7割を評価額としています。
例1は200㎡×2万円×0.7=280万円、例2は300㎡×2万円×0.7=420万円です。

実際の家と土地の評価額が、固定資産税納付書等から分かるなら、その金額を直接使って以降の計算をしてみてください。
調べ方はこちらにまとめています。

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空き家付きの固定資産税

それぞれの固定資産税額を計算していますが、例2では土地が広いので、土地の一部は特例による軽減率が変わっています。
家は評価額をそのまま課税標準額としますが、土地は特例適用後の価格を課税標準額とすることに注意してください。

【例1】
家の固定資産税:280万円×1.4%=3.92万円
土地の固定資産税:280万円×1/6×1.4%=0.653万円
※土地の固定資産税は、200㎡までは特例で1/6に減ります。
【例2】
家の固定資産税:560万円×1.4%=7.84万円
土地の固定資産税:280万円×1/6×1.4%+140万円×1/3×1.4%=1.306万円
※例2の土地では、広さが200㎡を超えているので、200㎡までは特例で1/6に、200㎡を超える100㎡は1/3の軽減です。
家の固定資産税 土地の固定資産税 合計額
例1 3.92万円 0.653万円 4.573万円
例2 7.84万円 1.306万円 9.146万円

更地の固定資産税

更地になると、家の固定資産税はなくなり、土地の固定資産税は特例がなくなります。
しかし、土地の固定資産税に特例がなくなっても、6倍(200㎡を超える部分は3倍)になるのではなく、更地の固定資産税は評価額の7割が上限です。

したがって、更地の固定資産税では、評価額×0.7が課税標準額です。

【例1】
土地の固定資産税=280万円×0.7×1.4%=2.744万円
【例2】
土地の固定資産税=420万円×0.7×1.4%=4.116万円

例1と例2のどちらも、更地にした方が固定資産税は安くなっています。
このような例では、解体費用を出しても抵抗は少ないかもしれません。

どのような場合に固定資産税が高くなる?

家の固定資産税がなくなり、土地の固定資産税に対する特例がなくなることを考えれば、必然的に固定資産税が高くなる基準がわかってきます。
特に、敷地が200㎡以内で全体が特例対象なら次の式で求められます。

空き家付きの固定資産税:土地の固定資産税+家の固定資産税
更地の固定資産税:土地の固定資産税×4.2
※特例がなくなって6倍×0.7=4.2倍

更地の固定資産税>空き家付きの固定資産税

土地の固定資産税×4.2>土地の固定資産税+家の固定資産税

土地の固定資産税×3.2>家の固定資産税

計算から敷地が200㎡以下では、家の固定資産税が土地の固定資産税の3.2倍より小さくなると、更地にしたときに固定資産税が上がるとわかります。

敷地が200㎡を超えると、特例の軽減率が変わってくるので計算は複雑です。
例えば、500㎡なら200㎡までの固定資産税が4.2倍、残りの300㎡は2.1倍になります(家の床面積が50㎡以上の場合)。
また、特例の適用は床面積の10倍までと決まっているので、土地が広いほど更地にしたときの固定資産税は上昇率が下がります(広いと特例の対象外となる部分も増えるので)。

その結果、200㎡を超える敷地を更地にしたときの固定資産税は、解体前の土地の4.2倍 を確実に下回ります。

少しややこしいと思いますが、結論は次の通りです。

【敷地の広さに関係なく、家の固定資産税が土地の固定資産税の3.2倍以上あれば、更地にしても固定資産税は上がらない】

以上、これまでの過程から、次のような傾向になるので参考にしてみてください。
なお、都市計画税を除いていますが、税率が低く軽減率も固定資産税より小さいこと、田舎では都市計画区域外もあるため、都市計画税の影響度は小さいはずです。
(都市計画税が含まれていると更地にしたときの上昇率は下がります)

  • 家の固定資産税が土地の固定資産税の3.2倍以上なら、解体しても固定資産税は上がらない
  • 地価が高い地域ほど更地にしたときの固定資産税は大きくなる(単純に2.1~4.2倍になるので)
  • 土地が広いほど更地にしたときの固定資産税は上がりにくい(1/6の特例の対象外部分が増えるので)

田舎の土地では、地価が安く土地が広い傾向から固定資産税の上昇が抑えられ、更地にするリスクは都市部よりも遥かに小さいと考えられます。

そうであれば、特に対策の必要性がある田舎では固定資産税が増えるケースよりも、解体費用がネックで放置されている可能性の方が高いと予想できます。

そうすると今回の空き家対策特別措置法の施行では、国や自治体が指導の口実を得たに過ぎず、自主的な対応は限定的かもしれません。
今後の様子を見て、また考察してみたいと思います。

まとめ

空き家の所有者がこれからしなくてはならないのは、空き家対策特別措置法による行政の動きと、自分の空き家が受ける影響の把握です。
客観的な視点で空き家が廃屋に該当すれば、解体を検討するのが無難で、固定資産税の特例適用外になってまで無理に維持する必要もありません。

また、解体は更地の売却価格に上乗せできば丸損にはならず、補助金を受けられる前提なら売却前提でなくても負担は小さくなります。
解体によって固定資産税の負担が減るケースもあり得ますし、解体費用と税負担を一度きちんと精査してみてもいいかもしれません。

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