賃貸物件を売却するには?入居者の対応や敷金について

賃貸物件

田舎でも賃貸物件の需要はありますが、人口減少からかなり経営は厳しいようです。
家賃が安いのに建築費は安くなりませんし、需要も供給も多い都市圏と違って、需要が少ない田舎では、差別化での集客も難しいでしょう。

賃貸物件の売却で問題になるのは、現在の入居者を退去させるかどうかです。
この点は買主の意向が関係するため、退去は必要になるとは限りません。

退去が必要でもそうでなくても、基本の売却手順は他の物件と変わらず、退去が必要なら引渡しまでに入居者へ退去してもらうだけです。
ただし、退去がスムーズに行われないと、非常に大きな問題を残しますので、法律的な側面も含めて、知識を深めておきたいところです。

賃貸物件を売却する手順

賃貸物件でも自分で居住している物件でも、不動産としての取引は同じです。
より詳しく知りたい場合はこちらもご覧ください。
http://www.tochikatsuyou.net/land/houhou/

1.価格査定してもらう
不動産会社に依頼して、現在の物件価値を評価してもらうのが価格査定です。
価格査定は1社ではなく、複数に依頼することで精度を高めることができます。

2.媒介契約を締結する
媒介契約とは、不動産会社に購入希望者を仲介してもらうための契約です。
媒介契約を締結することで、売りたい賃貸物件が市場に流通します。

3.売り出し価格を設定する
売り出し価格が売買価格になることは少なく、買主との価格交渉になります。
それでも、相場を無視した売り出し価格では、誰も買いたいと思わず、売り出し価格の設定は査定価格を踏まえながら決めます

4.購入希望者の内見希望に対応する
賃貸物件では、入居者がいる場合に内見(内覧)対応が時々問題になります。
集合住宅なら、外観をチェックして一部屋(または図面)を見る程度でも、戸建賃貸で入居者がいると、中を見せる対応に協力してくれないかもしれません。
謝礼を出すと対応してもらえる可能性もありますが、頑なに断るなら面倒です。

5.買主と売買価格を交渉する
不動産は交渉で売買価格が決まり、売り出し価格から多少の値引きを要します。
田舎では買主を選べることが少なく、交渉は買主有利でも不思議ではありません。

6.買主と売買契約を締結する
不動産会社の立ち会いにより、買主と売買契約書を取り交わします。
買主がローンを利用するときは、売買契約後のローン審査・契約なので、決済まで数ヶ月待たされるケースも考えられます。

7.売却代金の決済と登記依頼をする
買主から売却代金を受け取り、ローンが残っているならすべて返済します。
決済後は司法書士に必要書類を渡し、法務局で登記手続きをしてもらいます。

8.買主に賃貸物件を引渡し
所有権の移転登記がされると、その時点で買主の所有物になるため、売主は速やかに物件を引き渡さなければなりません。
引渡しといっても、大家として所有しているカギを渡すだけです。
大家が変わると、家賃の振込先も変わり入居者への通知(後述)が必要になります。

入居中物件の価値

賃貸物件の売買で入居者がいることは、プラスにもマイナスにも作用します。
どちらが優れているということではなく、買主のニーズによって分かれます。

売主としては、退去費用が高額になり、これまで住んでくれていた人に出ていけとも言いづらいので、入居中物件を希望する買主の方が断然に楽です。

入居中物件のプラス材料

買主にすると、投資対象として賃貸物件の購入するのですから、すぐに投資の回収が始まる入居者の存在はプラス材料になります。
入居者の募集費用と空室リスクの軽減により、入居中物件の価値は高くなります。

特に田舎では入居者を集めにくいので、入居中物件はアピールになるでしょう。
ただし、買主は入居中物件としての利回りを計算済みで、採算性から購入を希望する点を考えると、そのアピールで売り出し価格よりも高くなることはありません。

入居中物件のマイナス材料

入居者は借家権という法的に強い権利を持っており、現在の大家でも将来の大家(買主)でも、借家権を無視して退去を強要することはできません。
つまり、入居中物件は回収が早い反面、制限付きの物件だとも言えます。

この点は、買主が建て替えや改築を考えている場合、大きくマイナスに作用します。
購入前の退去を希望している買主は、退去が難しくなれば購入を見送るか、大幅に値引きを要求するはずです。

退去の有無によるメリットとデメリット

入居中物件では、退去の有無がどのように影響を与えるのでしょうか?

退去には費用負担のデメリットしかないように思えますが、実はメリットもあります。

退去がある場合

退去済みの物件では、賃貸物件に投資したいすべての投資家が買主になり得ます。
買主の希望により、建て替えやリフォームすれば良く、購入対象が広くなります。

また、戸建の賃貸物件や区分所有のマンションなら、投資家だけではなく居住住宅としての利用を考えている層にもアピールできるでしょう。
さらに、土地だけ欲しい人でも、解体を前提に希望することすら考えられます。

その一方で、退去させるための費用と期間は、売主にとって相当なデメリットです。
全員が一斉に退去してくれるならまだしも、最後の1人のために、他の全室を空室状態で運用するリスクは大きく、その間は採算性が格段に落ちます。

退去がない場合

入居中の物件では、最初から入居中を想定した買主や、退去を条件に購入を希望する買主に対象が限定されてしまいます。
したがって、買主候補が少なくなり売却の機会も減るので、流動性は低くなります。

しかしながら、退去費用の負担がなく、引渡しまで家賃収入を得られる点は、売主にとって二重のメリットを持ちますので、退去がある場合と比較になりません。
可能なら入居中のまま売るのが、売主の損失を最小限に防ぐベストな方法です。

また、入居中を希望する買主でも、時には退去を要求してくる場合があります。
それは、入居者が売主の審査であることに起因して、属性が悪かったり、家賃の滞納があったりする入居者を嫌うためです。

普段から適切に入居者管理をしていれば、このような要求はないと思われますが、入居者はメリットにもデメリットにもなることを知っておきましょう。

賃貸借契約と借主の権利

賃貸物件では、賃貸借契約によって借主(入居者・賃借人)に借家権が発生し、借家権とは借主が借りた物件に住む権利で賃借権の一部とされています。

住居は誰にとっても生活の基盤であり、借家権が容易に脅かさて退去を余儀なくされると、賃借人は大きな不利益を受けます。
そのため、借家権は法律で保護され、貸主よりも借主に有利になっています。

普通借家契約と定期借家契約

賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約があり、両者は多くの点で異なります。
借家権の保護が、借主に都合が良すぎるとして、定期借家契約が新設されました。

普通借家契約 定期借家契約
契約期間 ・1年未満では期間の定めがないとされる
・一般には2年更新が多い
・借主が希望する限り続く
・契約で定めた期間で終了
・1年未満の契約も可能
契約更新 あり(借主が希望すれば貸主は原則的に拒めない) なし(借主が希望するときは貸主との合意で再契約)

他にも契約方法の違いなど相違点は多いですが、普通借家契約と定期借家契約で決定的に違うのは、契約期間と契約更新の扱いです。

見分け方としては、「契約更新」があれば普通借家契約、「再契約」があれば定期借家契約になり、現在でも多くの賃貸借契約は慣習的に普通借家契約です。
定期借家契約は、短期契約を必要とするウィークリーマンション等で使われています。

賃貸借契約の更新と立ち退き料

普通借家契約においては、借主が契約更新を望んだとき貸主が更新を拒むためには、何か正当な事由(理由)を必要とします。
貸主の都合で借主を追い出せてしまうと、住居を失った借主が困るからです。

単に「売却するから出ていって欲しい」程度の理由では不足し、どうしてもその建物を明け渡してもらいたい事情がなくてはなりません。
そこで、正当な事由に該当するほどの特別な事情がないときに、“大人の解決方法”として発生するのが、いわゆる立ち退き料です。

契約期間中の解約申し入れはもちろん、買主からの更新希望を拒む場合においても、立ち退き料で解決することが少なくありません。

定期借家契約においては、契約期間の満了によって再契約に合意しなければ、それだけで借主は出ていくしかなくなり、契約が終了しても出ていかないと不法占拠です。
したがって、法的手段にも訴えやすく、退去トラブルは少ない契約方法です。

立ち退き料について

最初に結論から言ってしまうと、立ち退き料に相場はありません。
どうしても退去させる事情があれば、「ゴネ得」になってしまうのが立ち退き料です。

そこで、借主の立場になって、経済的な損失が発生しない+お詫びの気持ちで立ち退き料を考えるしかなく、家賃に比べてかなりの高額出費です。

【退去で貸主が受ける経済的損失】

  • 引っ越し費用
  • 引っ越し先の契約費用
  • 退去から引っ越しまでの休業損失
  • 利便性の変化による損失等

立ち退き料はどのくらい必要?

引っ越し費用については、ワンルームの単身から家族連れの戸建まで幅広く、一概に計算できないため、入居者の利用状態と地域の引っ越し代金から求めましょう。

賃貸物件の初期費用は、関東なら敷金2ヶ月、礼金2ヶ月、関西なら保証金6ヶ月程度、地域に関係なく仲介手数料1ヶ月、前家賃1ヶ月です。
仮に、家賃が現在と同等なら、合計すると6ヶ月分~8ヶ月分程度は必要です。

退去から引っ越しまでの休業損害とは、役所の手続きやガス開栓の立ち会いなどで、仕事を休んだ場合に発生する損失です。
数日なので、お詫びとして包む分に加えれば、特に問題はないでしょう。

判断が難しいのは、引っ越しで不便になったことによる損失ですが、普通は費用がかからないなら、より便利な場所に引っ越しますから発生しません。
ところが、賃貸物件が少ない田舎では、同条件以上の物件に引っ越せるとは限らず、余分に費用を用意しておいた方が無難です。

最後にお詫びの気持ちとしての費用ですが、数万円から話がこじれると半年分、場合によっては1年分くらいの家賃まで考えられ、金額は相手によります。

これらの金額を合計すると、トラブルがない前提で、引っ越し費用を除き家賃の10ヶ月分あれば足りると考えられます。
あくまでも家賃次第ですが、大抵は50万円から100万円程度に収まるでしょう。

賃貸物件の売却と入居者への通知

賃貸物件を売却すると所有者が変わり、入居者にとっては大家の変更です。
入居者には重要なことでも、大家から売却予定を事前通知する義務はありません。

大家が変わっても権利・義務は引き継がれ、同じように住み続けられますが、それでも一応の連絡をしておく方が好ましいのは確かです。

売却後の通知は買主と連名

売却後には、大家変更(家賃振込口座の変更)の通知を入居者に行います。
このとき、元大家(自分)から又は新大家(買主)からだけの通知では意味をなしません。

それは、単独でされた通知の場合、新大家を語る振り込め詐欺と区別が付かず、入居者が新しい振込先に振り込まない可能性があるからです。
こうした事情から、振込口座変更の通知は、元大家と新大家の連名で行い、さらに不動産会社を通じて行われるのが通常です。

不動産会社を通すことで、入居者は疑いがあれば第三者の不動産会社に連絡でき、信憑性を確かめることが可能になります。

賃貸物件の売却時における敷金の取り扱い

賃貸物件では、居住用の不動産売買と異なり、入居者から敷金を預かっています。
関西では保証金が該当しますが、これらの扱いはどうなるのでしょうか?

入居者から預かった敷金は、入居者が退去するとき原状回復で使われ、残金を入居者に返還する性質があるため、敷金は買主に渡しておく必要があります。
関西でも保証金のうち敷引き相当分は、原状回復費用として固定額が引かれるもので、敷引きで減額せずに保証金を渡さないと、後でつじつまが合いません。

もっとも、敷引きには関東の礼金の意味もあり、敷引きから原状回復するか、保証金から敷引きした残りで原状回復するかは統一されていないことから、買主に敷引き相当分を控除して渡すかどうかは契約次第です。

また、最初から敷金や保証金は、売却代金に含まれるとして事後に争われるケースもあり、売買契約で明確にしておかないと、トラブルを招きますので注意しましょう。

家賃を買主に渡す場合もある

決済が行われた時点で、精算金として1ヶ月分の家賃が買主に渡される場合もあり、その理由は大家変更の通知が、売買(所有権移転)の後に行われるからです。

所有権の移転から大家変更の通知までの間に家賃の振込が行われると、振込先は元の大家、つまり売主に振り込まれてしまいます。
家賃の振込は、基本的に前家賃方式で行われますので、本来は買主である新しい大家に振り込まれなくてはなりません。

そこで、先に買主へ1ヶ月分の家賃を渡してしまい、売主は売却後に1ヶ月分の家賃を入居者から受け取って、大家変更の通知以降は買主へ振り込まれる流れにします。

賃貸物件にローンが残っているときの注意点

賃貸物件に限らず、不動産はローンを使って購入・建築することが多く、売却時にローンが残っている場合は注意を要します。
特にローンと退去の両方が絡むと、売買契約が流れてしまうこともあります。

ローンを完済しないと売却できない

不動産のローンは、その不動産を担保として融資されており抵当権があります。
抵当権が残ったままの不動産を買う人はおらず、売買するときは、売却代金でローンを完済してから買主に引き渡す流れです。

もし売却代金でローンの残債と諸費用に届かなければ、自己資金を用意してでも完済しないと、違約になってしまうので気を付けましょう。

退去費用を多めに考慮する

入居者の退去を前提として売買契約が結ばれた場合、入居者には決済までに退去してもらわなくてはならず、退去費用が高額になりがちです。
退去させられない場合は言うまでもなく、退去費用が高額でローンが完済できなくても、契約が不履行になって違約金を請求されてしまいます。

したがって、売却代金でローンを返済できないときは、ローン返済用の自己資金には手を付けずに退去費用を捻出しないと、必ず資金不足に陥ります。
退去費用は事前に算出が難しいので、できるだけ多めに見積もっておくことです。

持ち家の事例ですが、ローン中など状況に応じた売り方のポイントをまとめていますので、参考にどうぞ。
http://www.tochikatsuyou.net/vacant/uritai-2/

まとめ

賃貸物件の売却では、大きな流れが他の不動産と同じでも、特有の違いを生じます。
入居者の退去は買主次第で必須条件ではなく、退去が必要ないのに先走って退去させてしまうと、長期間売れなければ空室営業が続きます。

可能なら入居中のまま売れた方が売主の労力も金銭も負担は小さく、退去を前提とした売買契約は、入居者次第で不安定になり危険です。
入居者の借家権(賃借権)は非常に強いので、軽視しないようにしましょう。

また、敷金や家賃の取り扱いといった、賃貸物件だけの特殊な対応もあります。
他にも、不確定な立ち退き料によって、ローンが完済できなくならないように、立ち退き料は別途確保する資金計画か、最初から退去を必要としない買主に絞ることが必要です。

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