消費税10%への増税による不動産市場の駆け込み需要と反動減

消費税10%への増税による不動産市場の駆け込み需要と反動減

消費税増税
私たちの日常生活に直結する消費税が、近々10%に引き上げられます。
いつかは上がると分かっていても、実際に上がったときは、物が高くなったことを実感するので、余裕のない生活がさらに苦しくなるのは避けられません。

不動産市場も例外ではなく、過去の消費税増税は大きな影響をもたらしました。
定価のない不動産であっても、増税の前後で需給バランスに変化があるため、市場原理から需要増では値上がり、供給増では値下がりの傾向になるからです。

増税前の今がチャンスとばかりに、不動産会社は営業活動を活発化しており、その時流に乗って不動産活用を考えるのも悪くないですが、一度落ち着いて消費税増税を見つめなおしてみましょう。

消費税10%になるのはいつから?

少子高齢化による社会保障費の増大を踏まえ、段階的に引き上げられてきた消費税ですが、8%から10%への増税は景気の低迷で二度延期されました。
現在のところ、2019年10月1日から10%への引き上げが実施される予定です。

景気の低迷を理由とした増税の延期は、経済政策(デフレ脱却)の失敗を認めることになる一方で、増税は景気の冷え込み・支持率低下に繋がるため、どちらに動いても政権へのダメージが大きく、再々延期があるのかどうか注目されています。

消費税増税の経過措置

一般的に、不動産の取引は数ヶ月のスケジュールで行われますから、契約時に増税前でも、物件の引渡しが増税後になることは十分に起こり得ます。
原則として、引渡日が2019年10月1日以降なら、消費税は10%で計算されます。

ただし、半年間の経過措置期間が設定されており、内装・外装・設備等に注文ができる分譲住宅と、工事請負による新築・リフォームは、2019年3月31日までに契約すれば、引渡しが10月1日以降でも8%の適用です。

消費税増税の影響を受ける費用

不動産は取引金額が大きいので、消費税増税の影響も大きくなりますが、すべての費用が消費税の対象になるとは限りません。
消費税の対象になる費用はきちんと把握しておきましょう。

・建物
建物の工事費用(新築・リフォーム・解体)には消費税が課税され、建物を売買する場合は、売主が個人なら消費税は非課税、売主が課税事業者なら課税です。
分譲マンションの購入では、建物相当の金額だけに消費税がかかります。
・土地
そもそも、土地には消費の概念がないので、売買に消費税は課税されません。
しかしながら、土地取引でも仲介手数料や登記費用は発生しますし、土地の整備費用など、意外と消費税増税の影響を受けるケースは多いです。
・設備、その他工事
建物に付属する設備・外構工事費用、土地なら造成・地盤改良・測量・樹木の伐採など、必要に応じて発生する費用が消費税増税の影響を受けます。
・諸費用
土地・建物のいずれも、不動産会社への仲介手数料、司法書士・土地家屋調査士への登記費用(報酬部分)には消費税がかかり、税金に消費税はかかりません。
また、金融機関に融資してもらうと事務手数料が課税対象です。

増税前と増税後の簡単な事例

消費税増税が響くのは主に建物なので、所有する土地にアパートを新築するケースを想定して、増税前の増税後の金額差を計算してみます。
建て替えの場合には、プラス解体費用となることに注意してください。

【想定ケース】

  • 木造2階建て6戸
  • 1部屋13坪(約43㎡、2DK相当)、坪単価50万円
  • 付帯工事費は本体建築費の15%(設備費用含む)
  • 3,000万円を借り入れ、事務手数料2%
金額(税別) 増税前(8%) 増税後(10%) 差額
本体建築費 3,900万円 312万円 390万円 78万円
付帯工事費 585万円 46.8万円 58.5万円 11.7万円
事務手数料 60万円 4.8万円 6万円 1.2万円
登記費用(報酬) 15万円 1.2万円 1.5万円 0.3万円
合計 4,560万円 364.8万円 456万円 91.2万円

※消費税が課税されない登録免許税・印紙税・不動産取得税を除く

今回の試算では、増税後に91.2万円の負担増となりました。
この金額を高いと見るか、そうでもないと見るかは人それぞれでも、少し時期が違うだけで出費が増えるのは、損をしている感覚が強いのではないでしょうか。

ちなみに、土地を購入する場合、購入時の仲介手数料にも消費税は発生しますので、土地価格の約0.06%(仲介手数料約3%×増税2%)が差額に加わります。

消費税の増税が需給に与える影響

過去、消費税率が上がる時期には、増税前に消費が増え(駆け込み需要)、増税後に消費の落ち込み(反動減)が起こりました。
不動産も同様で、増税前に需要増、増税後に需要減が予想されます。

1つの指標として、住宅の新設戸数を確認しますが、予想どおりなら増税前に住宅が多く建築され、増税後には住宅の建築が減るはずです。
消費税が5%から8%に上がった2014年度の前後を見てみましょう。

ただ、5%から8%への増税時は、1年半後の2015年10月1日に10%へ増税される予定があり、実質的には5%から10%に上がることを前提とした、大きな駆け込み需要・反動減だったことを念頭に入れてください。

総計 持家 貸家 分譲
2012年度 893,002 316,532 320,891 249,660
2013年度 987,254 352,841 369,993 259,148
2014年度 880,470 278,221 358,340 236,042
2015年度 920,537 284,441 383,678 246,586
2016年度 974,137 291,783 427,275 249,286

※住宅着工統計、総計には社宅等を含む
※持家:居住目的で建築、貸家:賃貸目的で建築、分譲:分譲目的で建築

増税前の駆け込み需要

増税前の2013年度には、前年度と比べて新設住宅が約9万4千戸も増加しました。
大きく増えたのは持家の約3万6千戸、貸家の約4万9千戸です。

ここで気を付けたいのは、持家と貸家でデータの捉え方が異なることです。
持家の場合、そのほとんどは戸建て住宅ですが、増税前に住宅を欲しい人が増えたのですから、これは単純に物件の需要増を意味します。

また、分譲・中古住宅も含めると、持家は大きな駆け込み需要が推測されます。
参考までに、東日本レインズのレポートによれば、首都圏における2013年度の成約件数は、中古マンションが前年度比13.3%増、中古戸建てが前年度比3.1%増でした。
参考:首都圏不動産流通市場の動向

対する貸家の場合は、住宅を貸したい人が増税前に「建てたい」需要であって、物件の需給としては供給増になります。
家賃(居住用)は非課税なので、借りる側の需要がそれほど増えたとは思えません。

アパマンやテラスハウスが多い貸家では、それだけ建築価格が高いので、増税の影響も大きくなりますが、賃貸物件の需給バランスは、駆け込み需要(建築需要)で供給増に振れたと見るべきでしょう。

増税後の反動減

増税後の2014年度は、増税前と比べて新設住宅が約10万7千戸減りました。
大きく減ったのは持家の約7万4千戸で、駆け込み需要も大きかったですが、それ以上に反動減が大きくなった結果です。

同様に、東日本レインズのレポートによれば、首都圏における2014年度の成約件数は、中古マンションが前年度比9.5%減、中古戸建てが前年度比8.2%減でした。
持家の需要は、新築・中古ともに増税後の明らかな減少が見てとれます。

一方、貸家の新設戸数は、約1万2千戸しか減っておらず、しかも翌2015年度には増税前よりも多い水準に戻しており、2016年度以降も増加傾向です。

これは、相続税の改正(実質的な増税)が2015年当初にあったことで、相続税評価額を下げたい不動産所有者が、賃貸住宅の建築需要を支えたと考えられます。
また、長く続いている低金利も、資金調達のしやすさから影響したでしょう。

背景はともかく、増税の反動減が大きかったのは所有目的の新築・中古住宅で、賃貸住宅にはそれほど影響しなかったことを過去のデータが示しています。

不動産売買や活用のタイミング

最後に、空き家(戸建て・マンション)や土地を持っている前提で、不動産売買や活用のタイミングを考えてみます。
前回の傾向から、所有物件によって対応を変えた方がよさそうです。

ただし、前回の増税(5%アップを見越した大きな駆け込み需要・反動減)と、今回の増税(2%アップ)を一緒に考えてしまうのは、焦って誤った判断を招きやすいので、その点だけは肝に銘じておきましょう。

空き家(戸建て・マンション)

空き家は、増税前に売ることができるなら、できるだけ売っておくのが確実です。
増税前には持家の駆け込み需要が期待でき、高値で売り抜けられる可能性がありますし、増税後には反動減による相場の下落も考えられるからです。

しかし、買う側の視点に立ってみると、増税後は「すまい給付金」による補てんがあること、住宅資金に関する贈与税の非課税枠拡大、ゆっくり物件を選べるなどの理由で、あえて増税後の購入を考えている人が必ずいます。

また、個人が売主の建物は、物件価格に消費税がかからないと知っている人は、最初から増税後を狙い目と考えているかもしれません。
したがって、増税前に値引きをしてまで売らなくてもよいのではないでしょうか。

土地活用(アパマン)

億単位の鉄筋マンションならともかく、5,000万円程度の木造アパートでは、消費税増税の影響がせいぜい100万円前後です。
賃貸経営では、入居率が悪くなるだけで浮いた100万円など消えてしまいます。

そう考えると増税前・増税後でタイミングを決めるのではなく、前提となるしっかりとした経営プランに基づき、現在の賃貸需要を把握するべきでしょう。
早急な相続税対策など、別の事情があるケースを除くと建築を急ぐ必要はありません。

また、前回の傾向で分かるように、賃貸住宅は増税後も建てられ続けてきました。
今後の人口減少社会を踏まえると、既に住宅全体で供給過剰ですから、小さな損(増税)にこだわって、大きな損(経営失敗)とならないように気を付けたいところです。

まとめ

過去に、消費税の増税が大きな駆け込み需要を引き起こし、不動産市場にも影響を与えたのは紛れもない事実です。
だからといって、今回の増税も同じだと考えるのはあまりにも早計すぎます。

消費税の増税は、物件を売る側の立場よりも、買う側の立場で影響が大きいです。
したがって、増税前に売ってしまおうと計画するのは間違いではないですし、増税前に建ててしまおうと計画するのも間違いではありません。

しかし、所有物件または建築予定の物件価格を考えたとき、増税2%の影響は、不動産活用の全体収支において決して大きいとは言えませんので、冷静に市場を見極め、最適な活用方法を探る方が得策なのは確かでしょう。

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